ドローンが広く知られるようになるきっかけとなった「AR.Drone」の後継機種「AR.Drone 2.0」(Parrot SA.)
ドローンという言葉をご存じだろうか。無人飛行機という意味で、もともとは軍事目的で開発された、地上から遠隔で操縦できる(あるいは、あらかじめ指示した目的地やルートを飛ぶ)無人の攻撃機(後の巡航ミサイル)や射撃練習用の標的機、偵察機のことを指していた。これらは、UAV(Unmanned Aerial Vehicle、あるいは、Unmanned Air Vehicle)というカテゴリーに分類されていたが、その後、航空撮影や農薬散布などの非軍事的用途、さらにはラジコンのようにホビーとしてなど、さまざまな方向へと利用範囲が広がり、サイズやデザインもいろいろなものが登場するようになった。
ドローンという名前の由来については諸説あるが、第1次大戦後に開発された標的機「DH.82B Queen Bee(女王蜂)」にちなんでDrone(雄蜂)と呼ばれるようになったという説や、飛行中の音がハチが飛ぶ時のうなるような音に似ているところからドローンと呼ばれるようになったといった説がある。
ドローンを身近にするきっかけの一つとなったのが、フランスのParrot社が2010年に発売したParrot AR.Droneの登場である。このクアッドコプター(4つの回転翼を持つヘリコプター)は、スマートフォンのアプリからWi-Fi経由で操作することで誰でも簡単に飛ばすことができ、本体に搭載された小型カメラから空中映像を楽しめるのも大きな話題となった。その後、同様のドローンが各社から数多く発売され、最近では、空を飛ばす以外に無人で操作できる船やロボット、無人自動車もドローンと呼ばれるようになっている。
ドローンはビジネスとしても注目を集めており、2013年末に米Amazonのジェフ・ベゾスCEOが、注文から30分以内に配達するドローンを使った無人配達サービス「Amazon Prime Air」構想を発表。それ以前に、イギリスのドミノピザのフランチャイズ店がキャンペーンでピザを配達する映像を公開したり、オーストラリアのZokka社がシドニー大学の敷地内で教科書をドローンで空輸する実験プログラムを実施している。
現在、ドローンビジネスの課題とされている航空法についても、アメリカでは米連邦航空局(FAA)が2015年にドローンに対する規制を緩めるとされている。その影響なのか、2014年に入ってから、Googleがドローン製造企業のTitan Aerospaceを買収し、ロボット掃除機ルンバの開発者がドローンを使ったセキュリティー会社CyPhy Worksを設立するなど、次々と新規参入が始まっている。
今後、大きく成長すると見られているドローンとは一体どのようなもので、どのような市場を作ろうとしているのか。「世界のドローン」では、すでに発売されている製品や開発が進められているドローンの解説をはじめ、その新しいデザインや運用アイデアなどを、幅広く紹介していく。
著者:野々下 裕子(ののした・ゆうこ)
フリーランスライター。大阪のマーケティング会社勤務を経て独立。主にデジタル業界を中心に国内外イベント取材やインタビュー記事の執筆を行うほか、本の企画編集や執筆、マーケティング業務なども手掛ける。掲載媒体に「月刊journalism」、「DIME」、「App DIME」「ライフハッカー」ほか。著書に『ロンドンオリンピックでソーシャルメディアはどう使われたのか』などがある。
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