米・カリフォルニアで2015年3月に開催された、主にパソコンの画像処理や動画制作、3Dゲームの開発などに使われるGPU(グラフィックスプロセッサー)をテーマにした技術カンファレンスGTC 2015(GPU Technology Conference)。この会場で、ドローン開発で知られるフランスのParrot社が、NVIDIAが開発するJetson TK1を搭載したドローン「Kalamos」を展示して話題になっていた。
NVIDIAのJetson TK1は、スパコン並みの処理能力を持つGPUの組み込み用開発キットで、ロボットや医療分野の数値計算システムで利用されている。Linuxをサポートしているためソフトウエアの開発がしやすく、応用範囲も広いことから、今回はKalamosの心臓部として採用された。実は、Kalamosは今年のCES(コンシューマ・エレクトロニクス・ショー)でも次世代ドローンのコアとして発表されていたが、その際、公開されたのはパーツのみ。それから約2カ月後のGTCでようやく姿を見せたというわけである。
Kalamosの中心部にはGPUが搭載され、今回は立体画像分析用に2つのカメラが搭載されていた
GPU搭載のドローンを制作した理由として、Parrot社の開発者は、「飛行中も高度な演算能力を発揮でき、撮影した映像の解析やセンサーで収集したデータをリアルタイムで解析できる」としている。今回、デモが行われたKalamosの実機には2つの立体センサーカメラが搭載されており、飛行しながらGPSのデータを処理してあらゆる角度から立体物を撮影。カメラの映像をリアルタイムに3Dモデリングデータとして構築するデモを行っていた。
デモエリアは照明がかなり暗く、立体物のコントラストもやや出にくいという悪条件ではあったが、Kalamosは正確にデータを収集。やや粗い映像ながら、ほぼタイムラグ無しで画像データを構築していた。今回はデモ用に開発したソフトウエアのため、あまり性能はよくないが、それでも十分にGPUドローンの性能を見せつけていたのが印象的だった。
問題は飛行時間で、高い演算処理能力を維持しつつ飛行させるのは数分が限界とのこと。また、現時点では具体的にKalamosにどのようなニーズがあるかは不明で、今後はリサーチをしつつ、本体の性能を高めていく予定だという。
IDSIAは、GPUで人工知能を持つより高性能なドローンを飛ばせるようになるという研究内容を紹介していた
GPU搭載ドローンによって、ドローンの活用分野はさらに広がる。「Deep Neural Networks for Visual Pattern Recognition Problems(視覚パターン認識問題に対する深層ニューラルネットワーク)」というセッションでは、スイスを拠点とする人工知能研究所であるIDSIAが、GPUを搭載した調査用ドローンの可能性について紹介していた。GPUドローンは人工知能の搭載が可能になり、さらに高精度な自律飛行が可能になるという。森の中や、障害物が多く低い場所でも一定速度でドローンを飛ばすことができるため、具体的な用途としては、調査はもちろん、道案内役として活用するなど、ドローンの活用分野をさらに広げられるとしている。
技術競争が進む中で、高性能でコンパクトなドローンはニーズも高く、今後はGPU搭載ドローンが1つのジャンルとして確立されるかもしれない。
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