書籍やピザの宅配、救命用のAEDの配送にドローン(無人機)を活用する数々のコンセプトが発表されている。GoProなどのカメラを搭載して、上空から周囲の景色や、スキー、マリンスポーツなどに興じる自分を撮影する人も出てきた。人が立ち入れない災害現場の撮影にもすでにドローンは活用されている。
UAV(Unmanned Aerial Vehicle)あるいはドローンの民生用途は、大別すると荷物の運搬と、搭載したカメラによる監視や偵察に分けられる。8月上旬と中旬にオーストラリアのブリスベンとニュージーランドのオークランドで開催されたMobile TECH 2014は、第一次産業におけるモバイル技術の応用にフォーカスしたイベントだったが、ここでもドローンを農業や林業、園芸や漁業などに利用する利点がいろいろと語られていた。
古くはポケットベルを牛の首輪につけて放牧するなど、広い土地を少ない人数で監視しなければならない第一次産業では、モバイルネットワークの活用方法がいろいろと模索されてきた。農作物の様子を遠隔で確認するためにカメラを設置したり、気温や湿度を測るセンサーを設置したりしてきたのだが、これまではモバイルネットワークを利用しながらも、カメラやセンサーは固定されているケースが多かった。電話線の敷設が要らず、電源さえ確保できればどこにでも置けるという点が利用されてきたわけだ。
しかし、農作物の生育状態、水源や灌漑用水の状況、野生動物による被害など、チェックしたい場所は分散している。林業では実際に伐採する場合には自ら足を運ぶ必要があるだろうが──やがてはロボットが代行してくれるようになるかもしれないが──状態を確認するだけならばドローンを飛ばす方が便利に違いない。
ドローン関係のニュースは増えてきていて、アメリカでは盗撮に利用されたケースも報道されている。日本であれば、露天風呂の上空をカメラ搭載の無人機が飛べば大騒ぎだろう。今後、盗撮の被害や重大な事故などが発生すれば規制に向けた動きが本格化するかもしれないが、特に人口の割に広大な土地を持つ国では、これからもさまざまな用途が試されていくことだろう。
著者:信國 謙司(のぶくに・けんじ)
NTT、東京めたりっく通信、チャットボイス、NECビッグローブなどでインターネット関連の事業開発に当たり、現在はモバイルヘルスケア関連サービスの事業化を準備中。
参考情報(外部サイト)
Mobile TECH 2014
Primary sector eyes mobile technology
高層ビルの窓から覗く、ドローンの目:北米で連発する「ドローンによる盗撮被害」
AED配送用小型無人ヘリ
寡黙で実直なカウボーイ