活動量計(アクティビティートラッカー)によって歩数や心拍数、睡眠時間など、日常生活を数値化する人が増え始めている。記録して視覚化することによって、行動をチェンジしようというのが、その背景にある考えだ。同じ考えを、健康に良くない習慣の改善に使おうという禁煙用のアプリやガジェットがいくつか登場している。
ワシントン大学のフレッド・ハッチンソン癌研究センターの心理学者、ジョナサン・ブリッカーが開発した「Smart Quit」は、iPhoneを使った禁煙プログラムのアプリで、一般向けには、2MORROW社から2014年中に公開される予定だ。喫煙習慣のベースにあるタバコを吸いたいと強く願う気持ちと闘って打ち勝つというのではなく、ACT(アクセプタンス&コミットメントセラピー)というアプローチに則って、まずは吸いたいという熱望を受け入れ、その気持ちをやり過ごす方法を教えてくれるという。トライアルでは、従来の禁煙プログラムよりも、1.5倍から3倍、禁煙成功率が高いという結果が出ており、禁煙だけでなく、ダイエット等への応用も考えられている・
Androidを使って、特に女性の喫煙者向けのアプリを開発しているのはアリゾナ大学医学部のジュディス・ゴードンが率いる研究チーム。「禁煙すると太る」と言われていることがタバコを止められない理由の一つとされているが、画像やメッセージにより自分の身体に関するポジティブなイメージを増幅し、より健康的な食事、運動量の増加と禁煙に同時に取り組むことで、このような不安を解消しながら禁煙を実現するアプリを開発している。
禁煙を助けてくれるデバイスも数多くある。「IntelliQuit」はアルコール検査器のように呼気を分析する小型のバイオセンサーで、呼気中の一酸化炭素濃度を測定する。一酸化炭素濃度は、より多く喫煙するほど高い数値を示すので、連動するアプリでをその数値や喫煙場所・時間をトラッキングして、喫煙量を減らすサポートをしてくれる。まだ開発段階だが、クラウドファンディングでの資金集めを予定している。
喫煙には欠かせないライターで喫煙行動をトラッキングして禁煙を助けようというのが「Quitbit」。何本目のタバコなのか、直前の喫煙からどれくらいの間隔なのかをライターに搭載したディスプレイに表示してくれるほか、スマートフォンの連動アプリでゴールを設定して禁煙の進み具合をトラッキングしたり、友達とシェアしたりすることができる。12月頃発売予定で、99ドルで予約を受け付けている。
禁煙補助具としての電子タバコについては、効果や害などについてさまざまな見解があるが、スマートフォンと通信して、使用状況をトラッキングすることができる「Smokio」や「Kosmo」といったコネクテッド電子タバコが出てきている。アプリで蒸気(タバコの煙の代わりに出す)の濃度を調節したり、ゴール設定をしたりすることができる。
カロリー摂取を抑えるために、食事の記録を残すことで自覚を促す『レコーディング・ダイエット』(岡田斗司夫著、2007年)が一世を風靡したことがあるが、これらのアプリやガジェットは、喫煙に関しても記録することで意識が変わっていくことを期待している。
著者:信國 謙司(のぶくに・けんじ)
NTT、東京めたりっく通信、チャットボイス、NECビッグローブなどでインターネット関連の事業開発に当たり、現在はモバイルヘルスケア関連サービスの事業化を準備中。
参考情報(外部サイト)
フレッド・ハッチンソン癌研究センターのQuest magazine記事
Quit Smoking Without Gaining Weight? An App Might be the Answer
IntelliQuitのウェブサイト
喫煙行動をトラッキングする禁煙ライター
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