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旅行中の駐車代は、クルマが自分で稼ぎます! 「車両クラウド」の研究とは?

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©davidmariuz – Fotolia.com

洋の東西を問わず、空港の駐車場には多くのクルマが停められている。日帰り旅行ならば別だが、通常は数日間、クルマは放置され、駐車場の1区画を占拠したまま再び動かされるのを待っている。そのあいだ、ずっと駐車料金はかかり続ける。

一方で、最近のクルマにはコンピュータが搭載されている。ストレージの容量も大きいし、コネクテッド・カーの普及で、通信キャリアのセルラー網にもつながる。こうしたリソースが、運転者の帰還を待つあいだ、エンジンを切られ、電源が切られた状態でなにもしないのはもったいない。

そう考えたオールド・ドミニオン大学(バージニア州)の研究者らは、駐車場のコンピューティング・リソースをデータセンターとして活用しようと考えている。車両クラウド(vehicular cloud)というビジョンだ。

車両クラウドでは、各車両はバーチャルマシンとして動作し、今、なんのタスクをこなしているのか、なにをする余力があるのかなどを、コントロールセンターに伝えることで動作する。旅行中、駐車料金を支払って駐車場に置いているだけのマイカーが、車両クラウドとして働くことで、お金を稼いでくれるマシンに変身するなら、自分も参加したいーーそう考える人は一定数いるのではないだろうか?

実現化への課題とは?

©davidmariuz – Fotolia.com

車両クラウド実現にはいくつかの課題がある。まずひとつは電源だ。さすがに、走行時のように車載バッテリーを使うためにアイドリングを続けるわけにはいかないので、車両クラウドに参加するクルマは、駐車場に設置されたコンセントから電源を取る。

次の課題はタスク管理。参加しているクルマは駐車場からいつ出ていってしまうか予測ができないから、1つのタスクは複数台のクルマで行うことで冗長化する。つまり、2台の構成では、2台が同じタスクと並行して行い、どちらかが途中で抜けてしまったら、3台目を新たにアサインして、抜けるクルマのタスクを引き継ぐ。3台の構成では、1台抜けたら1台、2台抜けたら2台補充して、常に3台が動くようにする。当然ながら3台の構成の方が信頼性は高くなる。

3つめの課題は車両管理だ。参加するクルマは、「駐車場に入った」こと、つまりクラウドの一部になれる状態になりつつあることと、「駐車場を離れようとしている」こと、つまり、クラウドの構成要素から外れつつあることを全体システムに知らせなければタイムリーな運用はできない。でも、駐車場には24時間、多くのクルマが停まっているので、車両クラウドも24時間運用が可能となるはずだ。

もうひとつ、ネットワークのデータ通信量の課題があるが、近い将来、実用化される5Gの高速・大容量なネットワークであれば解決できるだろう。

空港以外にもショッピングモールやスポーツ・スタジアム、アミューズメント・パークなどにも大規模な駐車場はあるが、駐車しているクルマの多くはその日のうちに出ていってしまうし、夜間などにはガラガラになってしまう。車両クラウド実現には、数日駐車する空港のロング・ターム・パーキングがうってつけのようだ。

関連リンク

What’s the Year, Make, and Model of Your Vehicular Cloud?
Datacenter at the Airport: Reasoning about Time-Dependent Parking Lot Occupancy
Reasoning About Mean Time to Failure in Vehicular Clouds

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LINEだけじゃない! メッセンジャーアプリは賢く使い分ける?

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メッセンジャーアプリといえば、国内ではLINEが広く知られているが、ほかにも優れた機能を搭載した通話&チャットアプリがあることをご存じだろうか。GoogleハングアウトやSkypeなど、名前は認知されているが、その性能や使い方については意外と知られていないものも多い。

メッセンジャーアプリとは

メッセンジャーアプリとは、リアルタイムでのメッセージのやり取りや、無料IP電話などの機能を提供するアプリケーションの総称で、主にスマートフォン向けのサービスのこと。スタンプ(イラスト)、動画、画像など、さまざまな表現機能を搭載したサービスが増加しており、手軽なコミュニケーションツールとして若年層を中心に人気を博している。

国内で利用されているメッセンジャーアプリを見ると、ほぼLINE一強。しかし、世界ではさまざまなアプリが使用されている。まず、世界シェアNo.1のWhatsApp。ラテンアメリカ・スペイン語圏で約95%(!)、世界では約20%(2016年3月現在)のシェアを誇る。続く2位は、日本でも普及しているFacebook Messenger。そして3位がQQモバイル、4位がWechatと、日本ではあまり馴染みのないアプリの名前が並んでいる。

以前はよく見かけたcommやカカオトークはどうしたのかというと、ディー・エヌ・エー (DeNA)が提供していたcommは残念ながら2015年4月にサービスを終了、2年半の歴史に幕を下ろしている。カカオトークにおいては、韓国で圧倒的な支持を得ており、95%ものシェアを見せている。

今や世界中で利用されているメッセンジャーアプリだが、国内でのLINEの用途は友人や知人とコミュニケーションを楽しむ、いわばプライベート向け。仕事上ではいまだLINEで連絡を取り合うことに抵抗がある人も多いようだ。そんななか、ビジネスの世界でも広く利用されているのがSkypeだ。

なぜ「Skype」はビジネスで活用されている?

Skypeの強みといえば通話機能だろう。グループ音声通話で最大25人、グループビデオ通話で最大10人と話せるだけでなく、有料なら携帯電話や固定電話への通話も可能。2015年4月からは、Skypeをよりビジネス向けに進化させた「Skype for Business」というサービスも始まり、250名までのオンライン会議が可能になるなど、社内・社外を問わず、世界のどこにいても会議に参加できる機能が登場した。

また、新しく追加された機能が「Skype 会議ブロードキャスト」だ。多数のオンライン参加者に向けた会議の作成が可能で、一度に参加できる人数は最大で10,000人。出席者はデバイスの種類に関係なく、どこからでも会議を視聴できる。インターネットの普及により場所を選ばす仕事ができるようになり、グローバル化が加速する今、まさにビジネスマンの要望に応えたサービスといえるだろう。

意外と知られていない「Googleハングアウト」

友達や仲間と気軽にビデオ通話を楽しみたい場合は、最大10人まで参加できるGoogleハングアウトがオススメだ。なにより便利なのが、特別な登録がいらず、Googleアカウントさえ持っていればすぐに始められること。もちろん無料で、チャット機能も充実しており、写真、絵文字、ステッカー、アニメーション GIF も送受信できる。

なかでもおもしろいのが、ワンタッチで居場所を知らせられる機能だろう。ハングアウトメッセージで相手に「Where are you?」(どこにいる?)と質問すると、受け取った側に「現在地を共有」というボタンが出現する。クリックすると地図がポップアップされるので、位置を指定して返信すれば、相手に地図で居場所を知らせることができるのだ。

また、世界や指定した人に向けて動画配信ができる「ハングアウト オンエア」も魅力のひとつ。無料で生放送番組をつくることができる機能で、YouTubeに動画をそのままアップすることも可能。リアルタイム動画配信といえば、日本ではUstreamやニコ生などが知られているが、ハングアウトが優れている点は、特別なソフトなどを使用せずに、違う場所にいる複数の人数が各々のカメラを使って同時にひとつの動画を配信できること。ちょっとしたミーティングや仲間内の雑談の記録としても使えるだろう。

ひと口にメッセンジャーアプリといっても特性はさまざま。シチュエーションや相手との関係性に応じて、アプリを使い分けてみてもおもしろい。シーンに合わせて使いこなせれば、他者とのつながり方にまたひとつ広がりが生まれるはずだ。

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【イノベーターズ】「テレビ、デジタル音楽の分野も独自のメスを入れ続ける天才プログラマー」竹中直純/後編

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たけなか なおずみ
1968年、福井県生まれ。高校卒業後、アパレルブランドに就職。1年間の勤務を経て大阪府立大学へ。プログラマーとして頭角を現し、現在に至る。2ちゃんねるの全文検索や電子通貨「モリタポ」、「BCCKS」「OTOTOY」など数々の設計・システム開発に携わり、自らも経営。坂本龍一のネット上の表現活動をサポートし、村上龍の『希望の国のエクソダス』の主人公・ポンちゃんのモデルになったという説も。そして、元タワーレコードCTO

通信やICTにまつわる”なにか”を生み出した『イノベーターズ』。彼らはどのように仕事に向き合い、いかにしてイノベーションにたどりついたのか。本人へのインタビューを通して、その”なにか”に迫ります。今回は「インターネットの『正義』に挑み続ける 天才プログラマー」、竹中直純さんの後編。

<前編はこちら>

「突然、できる感覚が得られるんですよ」

ちなみに東京に出てきたのは、NeXT Computer社がハードウエアから撤退することになってフリーランスの仕事が無くなったから。まさに同じタイミングで、のちにKMD(慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科)の奥出直人先生と藤幡正樹先生からSFCに誘われるのだ

竹中さんは、世の中のいろいろな物事に対して「もっとこうすればいいのに」と思っていると、同時に「こういうふうにすれば変えられるんじゃないか」という仮説も持っている。盲目的に理想を追うのではなく、技術と経験というベースがあるからこそ、理想を口にできる部分もある。「やりたい」と「できそう」がそれぞれどのくらいのバランスで組み合わさっていて、実践に至るのか。そういうことを質問したら、冒頭のカッコイイひとことが返ってきた。

「どこかでパーンと繋がるんですよ。たとえば『動画を圧縮する新しいハードがどこそこのメーカーから出ました』みたいなプレスリリースが目に入るとしますよね。H.264を使うと、当時のMPEG2の圧縮技術よりも、さらに4倍圧縮できるのか……みたいなことを思う。そうしたら現行のハードディスクに8波2週間分余裕で入るな……みたいな計算がパッとできて、だったらつくれるな! って」

ベタな言い方をすると「アンテナを張ってる」というやつだろう。培ってきた知識と経験があるから、一見関係なさそうなニュースやプレスリリースを目にしても「パーンと繋がる」のだろう。ちなみにここで言ってる「8波2週間分」とはテレビの地上波放送のことで、このエピソードは2003年、「SPIDER」という、全テレビ局の番組を同時録画するレコーダーを開発する決意をしたときの話である。

竹中さんは、「SPIDER」を開発したPTPという会社の創業メンバーのひとりだった。「SPIDER」の場合、最初に「全録」という発想があったらしい。

本当に面白いテレビ番組と信頼できる視聴率を見つける。

「きっかけは、夜中にはどんな番組やってるんだろう……っていうところだったんです。普段、真夜中にやってる番組って、わざわざ番組表まで見てチェックしないでしょ? 僕はテレビ好き世代なんで、あるときふと気になった。それと常々バラエティ番組全般のテロップの誤変換がひどいなって思ってたんです。僕は言葉をなるべく正しく使いたいと思っているので、これは許せないなあって感じだったんです」

お金については、「具体的な目的を伴ったものなら欲しい」という。「たとえば、新しくレコード会社と取引するためのディポジットとして」とか。そうじゃなければ「運用するのに気を使うくらいだったら他のことをしたほうが能率がいいので」、あんまりこだわらない

で、たまたまテレビをつけてそういう番組に当たると腹が立つ。
今、テレビを観るときは、どうしてもテレビ局の編成に左右されがちだ。ゴールデンタイムとかプライムタイムとか、観やすい時間帯に観る機会が多いし、宣伝などでの露出量も大きくて、なんとなくお馴染みな気分になってしまう。好きな番組は録画するけれど、それこそ真夜中なんて、存在を知らない番組だってある。

「そんなふうに思ってるなかで、僕がテレビに関してできることはなにかなって考えたら……全部録画して全部選べるようにする! っていうところにたどり着いたんです。これは特別なアイデアじゃなくて、コンシューマーがテレビ番組を選択する自由、観る自由を持つこと、という方針の延長線上にある当然の帰結ですよね」

竹中さん曰く、「コンシューマー目線の視聴率を確立したい」ということなのである。

「視聴率って、制作側にとっての価値観ですよね。リアルタイムでテレビの前に正座してCMまで全部びっちり観てもらう、という理想的な視聴者をカウントしている。そんなこと僕たちにとっては理想ではないじゃないですか。関係ないところとか興味ないところは全部飛ばしたいし、ダラダラしたところは1.5倍速とかで観たい。そういうふうにテレビと向き合うと、相対的に本当に面白いものとか価値のあるものがあぶり出されてくるでしょ」

早送りもされず、1.5倍速にもならず、みっちりしっかり観られる番組がはっきりしてくる。

「そういう部分まで含めた視聴率を取れれば、それはコンシューマー側から観た番組の良し悪しを表すバロメーターになると思ったんです。別に”いい番組をつくれ!”とか言ってるんじゃないですよ。”衆愚”といわれても、すごくつまらなくて内容がない番組でも、視聴率が高ければ、善。……っていう価値観はすでにテレビ業界に実装されてますよね。ただ、その数字自体に僕は信用がおけないんです。これを信用できるようにするにはどうすればいいかっていうのを一所懸命考えた結果が『SPIDER』だったんです」

SPIDERをつくったPTPは1999年に発足するが、初号機のテストマーケティングは実に2006年の事。当時全地上波を1週間録画できるマシンを200人程度にサンプリングした。するととても面白い発見があったという。

「『渡辺篤史の建もの探訪』が大人気だったんです(笑)。放送は毎週土曜の早朝で、普通の人は見ないし、よほどの人しか録画しないじゃないですか。でも全部録ってあれば、多くの人が見る。たとえば、『このヤバい物件を、今週渡辺篤史はどう褒めるんだろう』みたいな、制作側の意図とは一致しない見方は何通りもあると思うんですけど、だとしても、まさかここに人が集まるなんて思わないでしょう? ところが集るんですよ」

もしかしたらこれが「SPIDER」基準での高視聴率番組になるかもしれないわけだ。むしろ今はトラッキングできていない録画視聴データはむしろとっくの昔にそうなっているのかもしれない。07年に法人向けに販売が始まり、当時志していたコンシューマー向けに関しては、現在も準備中。竹中さんは取締役を離れ、PTPへの出資は続けている。

インターネットでみんなを幸せにしようという使命感。

大学時代に「当面これでいこう」と思ったまま、おおよそ30年に達しようとするプログラマー生活だが、40歳を過ぎた頃から、竹中さんのなかで使命感みたいなものが生まれてきたという。

「僕はいつもやってみてからあとで気づくんですけど……テレビとか出版とか音楽なんかの既存メディアの産業構造がインターネットとうまく合っていないので、それを合わせないといけないなと。仕事し始めて20年ぐらい経ってから、ようやくそこに気づいたんです」

それまで興味のあることにいろいろ手を出し、儲けたり損したり成功したり失敗したりしてきたわけだが、あるとき、出資を求めたベンチャーキャピタルの人にバカ呼ばわりされたらしい。

「自分が関係している会社の名刺を並べて自分の素性と事業を説明したんです。そしたら『我々ベンチャーキャピタルは、3つ以上の会社を経営している人に出資はできません』って、けんもほろろに断られたんです」

問題は「3社」という数ではなくて、きちんとした理念に基づいて事業を展開しているのか否か。

「そこのところをしっかりと言葉にできないと、全然ダメなんだと痛感させられました。それで出資してもらえないのは損なので、そこを最適化すべきだと自覚したんです。使命、みたいなことが言えるようになったのはそれ以降ですね。今はまだ過程なんで、うまく説明できてるとはあまり思わないんですが、でも僕のやりたいことは少しずつわかってもらえるようになってきました」

数多あるイノベーションのなかで、今の所、いちばん達成感を得たものを尋ねると、「OTOTOY」なのだそうだ。「OTOTOY」は、独自レコーディングによるライブ音源やインディーズなど、他の配信サイトにはない独自のハイレゾデータを数多く揃えることで人気を呼んでいる音楽配信サイト。2004年に「recommuni」としてスタートしたもので、そもそもその名の通り、音楽による人と人とのコミュニケーションを標榜していた。素晴らしい音楽は、誰かとわかち合うことで楽しさも倍増すると考え、当初から、DRM (Digital Rights Management=コピーコントロール)に異を唱え続けてきた。

「それが2007年頃、日本の音楽業界からも取り払われ始めたんです!というのも、スティーブ・ジョブズが『やめよう』と公開書簡で主張したからで、世間的にも『iTunesさんがやめるならしょうがないね』という流れができました。日本ではよくある、外圧に屈した形ではあるんですが、日本のレーベルやアーティスト、ユーザーに対して、それよりずっと前から『コピーコントロールは無駄』を主張してきたのは僕らだということもあり、その時期から権利者と話すときに一定の信用が得られるようになりました。そして間接的にでも、僕らのサービスが日本の産業構造を良い方向に変えるのに少しでも貢献できたという自負はあります」

この7年前には、音楽家の坂本龍一氏らの発起によるメディア・アーティスト協会(MAA)を通じて、民間の著作権管理事業者がJASRACと並んで参入できるように著作権法を改正する手伝いもしている。

「確かにこの時も似たような達成感はありましたが、それはもう16年も前のことなので…」

でも、「達成感」という切り口であまり事業を捉えたことはない、という。それよりも、日々、小さな小さな達成感を繰り返し得ているというのだ。

「プログラムがうまく書けた時ですね(笑)。それがなんの役に立たなくても、単にきれいに動くというだけですごく嬉しいんですよ。僕は『OTOTOY』ではプログラミングをいまだにやっているんですが、Apple ロスレス(ALAC/編集部注:原理的にまったく音質が劣化しない音声圧縮方式)のエンコーダーを商業レベルで実用化することに成功しています。動的にサーバサイドでエンコーダーを動かしているのは世界でもたぶんうちだけです。アセンブラレベルの調整が必要で、そういう部分がすごく楽しかった。OTOTOYのお客様はALACが使えることにすごくメリットを感じてくれているし、このおかげといってはなんですが、2014年当時、普及度が低くハイレゾで使えるかどうかもあやふやだったALACがいまだに世界中のハイレゾ音楽プレイヤーの多くでそのままデコード(編集部注:圧縮前の元のデータに復元する処理)できる。これはちょっと誇らしいですね」

ものすごく雑に、ディテールを無視して翻訳すると、つまりはプログラマーとしての腕で世界を動かしたことが嬉しい、ということ。

「”コード””コーディング”という単語はいろいろな意味を持ってるんです。『秘密のこと』とか『暗黙の仕組み』とか『暗号』とか。僕はこの言葉がすごく好きです。世の中とがっちり繋がってる部分で、実際に”コード”の力を示せると快感なんです。プログラマーが社会を動かす、そこに関係している快感が得られる。それはたとえば、現実社会で建築会社の人が『俺がこの橋を作った』って自慢するのに等しい。僕らは仮想的な情報空間に穴を開けたり橋をかけたりする。それは、そのための能力とビジョンがなければ実践できません。僕にはそれができるチャンスが何度もあって、実際に何度も穴を開けたり橋をかけたりしてきた。それはすごく恵まれてるな、と思います」

20代の頃からほとんど見かけは変わっていないという。この日のファッションも、ぴっちりプレスされた白いボタンダウンは<GAP>。同じものを5枚ほど所有している

関連リンク

OTOTOY
BCCKS
ディジティ・ミニミ

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夏のお悩み、「エアコンの電気代」を最大4割(!)も減らすガジェット

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そもそもエアコンはどうやって部屋の温度を下げるのか?

暑い夏を乗り切るために欠かせないエアコン。熱い外気を室外機から取り込み、冷やして室内機に送り込む。室内機は室内の熱い空気を、外気で冷やして室内に送る。その際に暖められた空気は、室外機を経由して外に放出される。

つまり、空気の温度を下げるのは室外機の仕事だ。暑い昼間に室外機が取り込む外気の温度は極めて高く、それを冷やすには相当な電力を要してしまう。Mistboxは、室外機が取り込む外気の温度をミスト(水の噴霧)であらかじめ冷やすことで、室外機の効率を上げるというガジェットだ。

Mistboxがなぜエアコンの効率を上げるのか、わかりやすく解説している

ミストを利用し、気化熱で外気の温度を下げる仕掛けは、ビルの空調用の大型室外機などで使われている。これを小型化して、家庭用として開発した。価格は399ドルと決して安くないが、5分で設置でき、エアコンの電気代を2〜4割減らせるという。

Mistbox本体もソーラーで駆動し、外気温をモニタリングして必要最小限のミストしか噴出しないという省電力設計だ。ミストは外気の湿度を上げるが、室内に取り込むわけではないから、湿気が室内に入ってくる心配はない。稼働状態はスマホのアプリで確認することができ、月ごとにいくら「浮いた」のかまで算出してくれる。

室外機にMistboxを取り付けるときには、屋外の水道とホースでつなぐ必要があるので、庭で植物を育てているような戸建ての家に適した製品なのだろう。ランニングコストとして水道代がかかるが、電気代の節約で十分にお釣りはくるだろう。ただ、水不足が深刻な地域には向かないかもしれない。アメリカでは家庭用の省エネ製品として30%の税額控除の対象になる。

関連リンク

Mistbox

【紳士のSNS講座】 第7回 夏の話題を、怒涛のハッシュタグ乱立大作戦で、クールに熱く演出する。

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夏到来! で、かき氷のお自慢です。かき氷って、この数年ものすごく流行っていますよね? 日光の天然氷×フレッシュフルーツのシロップが人気を集めたり、台湾や韓国から次々新店が上陸したり。で、みんなどんどんアップします。何時間も並んでありつくとうれしいし、間違いなくおいしいから、その感動を世界にお知らせしたくなる。でも、だからこそ、正直SNSでは飽和状態。”ビジネスいいね”を幾つかもらって話題は消費されていきます。

そんなごく普通のお自慢を差別化するためにハッシュタグを使いましょう。今回はそのお作法を学んでいきます。

当たり前の中に特異点を置き、ハッシュタグで差別化。

では、作例をみていきましょう。

ポイント①本文では「オレのかき氷への姿勢」を明確にする。

夏場には多くの人々が「かき氷食べた」ということをお自慢します。今や「かき氷そのもの」と同じくらい「SNSでのかき氷お自慢」は夏の風物詩になっています。そこに同調してヌルく楽しくSNSを盛り上げることもできますが、この手法はいずれ「コンビニの新商品をお自慢する」の回で詳しく解説しましょう。今回は、「夏=かき氷」というごく普通のムーブメントのなかで、「自分は普通じゃないんだ」ということをいかに主張するかにスポットを当てています。

例えば、いきなりの「4カ月ぶり」という表現。「1年ぶり」ではなく「4カ月ぶり」。つまり前回来たのは3月です。3月に、春先にかき氷を食べる男なわけです。これだけで「ヌルく楽しく」投稿する多くのみなさんとの差別化は明らかです。が、しかし……。

ポイント②本文はクールに、プロフィール代わりのハッシュタグで熱く。

世の中の、他のかき氷投稿と差別化したいのは山々ですが、「いかに自分がかき氷好きか」を熱く語りすぎるのは逆にサムイサムイですよね? 写真に添えられた文章が驚くほど素っ気ないのはそのためです。要するに「かき氷を久しぶりに食べておいしかった」しか言っていません。以前の「富士山のお自慢」と同じように、「自分にとってかき氷は日常」なのです。その喜びを語り過ぎてしまうと、イベント感が出てしまう。「調子に乗っている」というところは見せたくありません。

だからハッシュタグ。

「大のかき氷マニアである俺が……」なんて書くとすごくいやらしいですが、「#かき氷マニア」というハッシュタグに変えるだけで、途端に体温が下がります。かき氷マニアを自己申告していることには変わりないのに、後者には「みなさんご存じのとおり」みたいな一般性が発生しています。事務的な、業務連絡みたいな佇まい。それでいてお自慢するところはきちんと伝えている。ハッシュタグがある種のプロフィール的な役割を果たしてくれているのです。

あるいは、かき氷についてしか投稿しないと割り切れるのであれば、アカウント自体を「武田暑乗@年間300杯かき氷を食す男」とするやり方も効果的でしょう。

ポイント③さらにはオーディオコメンタリー代わりに、とにかく熱く補足!

その他のハッシュタグでは、#実は冬が旬 とか #冬の方が氷が極薄 とか #冬の方が舌触りが最高 とか #気温によって刃の角度を変える とか #夏場はあっさり系シロップ とかの「かき氷豆知識」を惜しげもなく投下しています。これが、たった4行のさらっとした本文の行間を埋めているのです。かき氷の世界は実はこれほどに奥深くて素晴らしいのである、ということをハッシュタグの業務連絡感を利用して伝えています。言ってみればDVDの特典としてついているオーディオコメンタリー。なんでもないシーンの裏側にスタッフ・キャストのどれほどの苦労があったかを副音声で教えてくれるアレです。

このハッシュタグには、あっさりした感想に力を持たせる機能があります。

「うまい」のたった一言も、海原雄山がいうと重みが違うように。アコースティックギターでかき鳴らすCのコードもエリック・クラプトンがやれば涙が出るように。「ふざけたロスタイムですね」というクレームも松木安太郎がいうと、解説の熱さに聞こえるように。

今回は同時に、#かき氷 #夏 #日本の夏 #夏休み #風物詩 など、特に必要がないように見えるハッシュタグも配置しました。これらは「間口の広さ」の演出です。こうしたベーシックなハッシュタグを検索して、たまたまたどり着くライトユーザーからのレスポンスも期待してのことです。

余談ですが先日、コロンビア大学とフランス国立研究所の調査結果がワシントンポスト電子版で発表されました。曰く、「SNSでは記事を読まずにタイトルだけでレスポンスする人が6割」とのこと。この投稿にタイトルはありませんが、おいしそうなかき氷の写真さえあれば、「いいね!」やシェアが発生する可能性は非常に高まります。ベタなハッシュタグは、多くの人たちに検索され、彼らを誘導する機能を持ちます。

講師:武田篤典

何気ない所作のなかにある「モテ」を顕在化し、好評を博した『スマートモテリーマン講座』著者。SNSなど各種コミュニケーションにおける礼儀作法を研究する「武田流万(よろず)礼法」家元。

※武田篤典先生のSNS講座が読めるのは「TIME&SPACE」だけ! 「#紳士SNS」で応援しよう!

【世界のサイバー事件簿 ③】監視カメラから侵入!? トルコのパイプライン爆発事件

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インターネットの通信機能を悪用して、IT関連のインフラを妨害・破壊するサイバー事件は、今もこの世界のどこかで起こっている。本連載では、世界各国で起こったサイバー事件にスポットを当て、その驚きの攻撃手法を解説しつつ、事件の全貌を明らかにしていこう。

サイバー攻撃か、それとも事故か……?

それは2008年8月5日、夜の11時ごろに起こった。トルコ東部の小さな町、レファヒエ。ようやく涼しくなった夏の夜、眠りにつこうとしていた住民たちは、突然の雷鳴のような爆発音に、なにごとかと家々から飛び出した。1kmほど先で巨大な炎が黒煙とともに空に向かって渦を巻き、頭上の雲がオレンジ色に染まっていた。住民たちの誰もがそこにパイプラインが走っていることを知っていた。起きてはならないことが起きてしまったのだ。燃えあがる炎の輻射熱が、不安げに見つめる住民たちの顔をほてらせていた。

全長1,768kmに及ぶバクー・トビリシ・ジェイハン(BTC)パイプラインは、カスピ海の油田から地中海へ原油を運ぶために建設された。アゼルバイジャンの首都バクーを出発し、ジョージア(旧:グルジア)の首都トビリシを経て、地中海に面したトルコの港ジェイハンに至る、世界で2番目に長いパイプラインだ。日本の本州の長さに匹敵するといえば、その長大さが想像できるだろう。そのパイプラインが爆発したのだ。鎮火と復旧には3週間もかかり、トルコ経済は混乱、石油会社は巨額の損失を被った。

すぐさま、反政府組織のクルディスタン労働者党(PKK)が犯行声明を出した。だが不思議なことに、トルコ政府は犯行声明を無視するかのように、この爆発はシステムの故障による単なる事故だと発表した。実際、パイプ内を流れる原油の圧力が異常に大きくなったのが爆発の原因で、外部から何者かがパイプラインに爆発物を仕掛けたような痕跡はなかった。だが、世間はPKKとトルコ政府のどちらの発表も疑った。そして、国家レベルのサイバー攻撃であるという第三の可能性が浮上してきたのだ。

赤外線カメラに写った2人の男

BTCパイプラインは地中に埋設されていて、ところどころが地上に露出し、塀で囲まれている。さまざまなセンサーやカメラによって厳重に監視され、爆発を起こすような重大な異常はすぐにコントロールセンターが察知する最先端のシステムを誇っていた。ところが、前兆に気づくどころか、爆発が起きたのを知ったのは、なんと爆発の40分も後だったのだ。

爆発の前後の時間、警報システムはまったく作動せず、万が一のための人工衛星による監視もなぜか止められていた。監視カメラの映像も、爆発前の60時間にわたる分のデータが、すべて消去されていた。システムの故障などではなく、明らかに何者かがシステムをハッキングしたようだ。

ただし、その「何者」かはひとつのミスを犯していた。赤外線カメラだけは、通常の監視カメラのネットワークとは別のネットワークに取り付けられていたことを知らなかったのだ。その消去を免れた赤外線カメラのデータに、決定的な映像が残されていた。そこには、深夜、ノートパソコンを手にパイプラインに沿って歩く2人の男が写っていたのだ。

2人の男は、パイプラインのバルブステーションの監視カメラからネットワークに侵入したと見られている。バルブステーションとは、地中のパイプラインを制御するため、一定の間隔でつくられた施設だ。原油の漏れなどがあったときに、文字通りバルブを閉めて対応する役目を果たす重要な施設であり、高いフェンスで囲まれている。そこに設置されていた監視カメラが侵入口となったのだ。

2人の男はスパイ映画さながらに、監視カメラからパイプラインのネットワークに侵入したのか!?

監視カメラとはいえ、それがネットワークに接続しているのなら、スマホやパソコンとなんら変わりはない。監視カメラ自体を乗っ取ってしまえば、やすやすとシステムに侵入できてしまうのだ。2人の男はそんな監視カメラにノートパソコンを接続して侵入し、システムのコントロールを奪い、攻撃のためのウィルスをシステム内に放ったのではないかといわれている。8月5日の夜になったら、警報システムを無力化し、通信を遮断、パイプライン内を流れる原油の圧力を高めて爆発させよ、とプログラミングされたウィルスを……。

あなたも監視されているかもしれない?

それにしても、なぜ侵入口が監視カメラだったのだろうか? にわかには信じられないような理由である可能性が高いという。

納品された監視カメラは、パスワードやIDなどが、「12345」といった簡単な数字になっているのが一般的だ。本来は購入者が新たにパスワードを設定しなくてはいけない。ところが、複数の監視カメラを同時に設置する場合、単に面倒だから、とか、あと回しにされる、とか、そんな理由で設定を変えずに使っているケースが実は意外と多いのだという。セキュリティのために導入する監視カメラが、ハッカーたちの進入経路になり得るというのはなんとも皮肉な話だ。

我々の身近にある監視カメラも、ハッカーに狙われているかもしれない……。

一般市民はハッカーたちの対象にはならないと私たちは思い込んでいる。だが、ネットワークにつながったものはなんだってハッキングの対象となる。あなたの近所にあるコンビニはもちろん、ふらりと立ち寄ったカフェすらも、ハッカーから観察されているかもしれないのだ……。

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もうどうにも止まらない! 人工知能の超進化を促す「クラウドロボティクス」とは?

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クラウドのAIがロボットを賢くする

「三人寄れば文殊(もんじゅ)の知恵」ということわざがある。凡人でも大勢が協力し合えば素晴らしい結果が生まれるという意味だ。これのロボット版が「クラウドロボティクス」だと思うといい。ロボットだってクラウドを通じて大勢が協力し合えば、とてつもない力を発揮するのだ。

たとえば学習能力だ。ロボット1台だけでは、頭脳に当たるコンピューターやメモリーに限りがあるから、学習の質や量にも同じように限りが出てくる。しかし多くのロボットが、自分が学んだことをせっせとクラウドに送り、そこで高性能コンピューターの人工知能(AI)がそのデータを整理、分析。ロボットに「知恵」として送り返したらどうなるだろうか。圧倒的な速さでロボットは賢くなっていくに違いない。

あるいは、こんなことも可能だ。お掃除ロボットにカメラやマイクなどの「目」や「耳」を搭載し、クラウドに情報を送るようにさせる。そこで人工知能が、お掃除ロボットが見たものや聞いたものを分析し、判断をすれば、お年寄りのひとり暮らしなら生活の様子や会話から元気かどうかを判断し、異常があれば家族や病院にSOSの連絡が行くようにもできる。もちろん、泥棒を見つけたら警察に連絡をさせることもできる。そんなふうにクラウドロボティクスは、お掃除ロボットを介護や防犯に役立つ見守りロボットとして活躍させることも可能にする。

あるいはまた、クラウドに置かれた人工知能がドローンや自動車をコントロールすることができれば、ドローンや自動車がロボットに変身したことと同じになる。つまり、クラウドロボティクスとは、広い意味での「あらゆるもののロボット化」へとつながる考えでもあるのだ。

クラウドでロボットたちが学習した情報を共有したり、人工知能のサポートを受けることができれば、ロボットはどんどん賢くなっていくはずだ

ロボットの脳が巨大化したら?

人間が立ち上がり、二足歩行をするようになったのは、大きくなった脳のせいだといわれている。四足歩行だと重い頭が邪魔になるからだ。ロボットはもっと大変だ。バランスを取って二足歩行をするだけでも、ロボットの脳、つまり内蔵コンピューターはその能力をフル稼働させている。

それにプラスして、人工知能のような高度な能力をロボットに持たせようとしたら、頭(つまりコンピューター)が巨大になりすぎて、二足歩行どころか「スターウォーズ」のジャバ・ザ・ハットのように動くこともままならなくなってしまうだろう。つまり、ロボットを今以上に賢くしようと思えば、ロボットの大脳をロボット本体の外部に置くクラウドロボティクスの考え方は必須となるのだ。

EMIEW3が見せるクラウドロボティクスの「今」

クラウドロボティクスという言葉は、2010年、Googleの研究者ジェームズ・カフナーという人が初めて提唱したといわれている。それはビッグデータや人工知能というものに世界が注目し始めた時期と重なる。つまり、ロボットがビッグデータや人工知能の恩恵にあずかるには、ロボットもまたネットワークに接続されることが必要だとカフナーさんは考えたのだ。

そして、時代はカフナーさんのアイデアをまさに現実のものとしつつある。たとえば、下で紹介しているYouTubeの動画は、日立が開発しているロボット「EMIEW3」のデモンストレーションを記録したものだ。ここでは複数の「EMIEW3」が、クラウドを介して情報を互いにやり取りし、仕事を分担したり、連携したりしている。高度な会話能力も、クラウドの高性能コンピューターのサポートがあればこそだ。この動画を見れば、クラウドロボティクスのなんたるかが直観的にわかるはずだ。

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【世界のドローン33】1年間、泳ぎ続ける海中探索ロボット「Wave Glider」

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ドローンが活躍する範囲はどんどん広がり、空から陸、そして海を自在に泳ぎ続けるドローンが登場している。LIQUID ROBOTICSが開発する「Wave Glider」は、地球の約70%を占める海を探索するために作られた無人の海洋探索ロボットである。海上を泳ぎ回る機体と、海上に浮かぶ機体のペアで構成され、それぞれでエネルギーを自家発電することで、1年間休みなく、海からのデータを無人で送信できるようになっている。

海中を探査する方の機体は、細長い複数のオール型の翼を持つグライダーのような独特な形をしており、翼を動かすことで人間1人を引っ張れるほどの推進力を生み出す。もちろん、海中カメラや各種センサーも搭載。収集したデータは海上に浮かぶもう一つの機体へ、そこからモバイル通信を使って基地局へとリアルタイムで送信される。海上にある本体は太陽光パネルを動力源に、耐久性の高い素材で作られ、台風やハリケーンで荒れる海でも問題なく動かせるという。コントロールは遠隔から行い、目的に合わせてセンサーやソフトウエアのアップグレードも可能だ。

「Wave Glider」が作られた目的は、海水の温度や波の高さ、水質の変化といったさまざまな海洋データをリアルタイムに収集するためである。海に関するデータはこれまで、観測船や海洋データブイ以外に商船や漁船から集めていたが、一定の範囲を定期的に長期間調査する方法は意外にもなかったという。また、海上で発生する台風やハリケーンの情報は主に気象衛星から観測しているが、「Wave Glider」を使えばもっと具体的に海の天気の変化がわかり、今まで収集するのが難しかった貴重な海上や海中のデータが収集できるようになる。こうしたデータは、航行中の船や海上プラントなどの安全を守る役割も果たしてくれるという。



このような水中ドローンが注目されているもうひとつの理由に、”サメの監視”がある。ここ最近、サメによる被害が世界的に広がっているが、現状では目視での監視しか対応策がないという。そこでアメリカでは「Wave Glider」でサメの行動を海中で間近に監視し、いち早く警報を出す計画が進められている。さらにこの計画では水中ドローンでサメの行動を長期間研究し、人に近づかない方法を開発するところまでを目指している。

水中ドローンについては、先日、台湾・台北市で開催された国際ITイベント「COMPUTEX TAIPEI」でも、水中動画撮影用の潜水艦型ドローンが展示されており、注目を集めていた。より高度な機能を持った「Wave Glider」は、海に関するさまざまなビジネスで需要が広がっていくかもしれない。

COMPUTEX TAIPEIで展示されていた水中撮影用ドローン(撮影:野々下裕子)

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LIQUID ROBOTICS

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【ITプチ長者への道】鉄ヲタの愛は国境を越える! 前編「全世界で8,000万円を売り上げたスマホ用鉄道シミュレーターゲーム」

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スマホアプリやLINEスタンプ、イラスト、写真など、ネットを利用して密かにヒットを飛ばした”知られざるヒーロー”を紹介する「ITプチ長者への道」。第3回は、個人制作のアプリでありながら全世界でヒットしているiOS向け電車運転シミュレーター『Train Drive ATS』シリーズの作者、Takahiro Ito氏に話を聞いた。

少年時代から育まれた「ダイヤグラム」愛が産んだ世界的ヒット作

その驚異的な緻密さが世界から称賛される日本の鉄道。その核ともいえる「運行システム」をマニアックに再現したのが、2012年に第1弾がリリースされたTakahiro Ito氏の『Train Drive ATS』シリーズである。

『Train Drive ATS』(iOSアプリ/ライト版 無料、フルバージョン 840円)の操作画面。東武鉄道とライセンス契約を結び、実際の車両が使われているが、駅や路線はItoさんが生み出した架空のものだ

「古くは向谷実さん(元・カシオペアのキーボディストで、熱狂的な鉄道ファン)がプロデュースした『Train Simulator』(音楽館)や、アーケードゲームとして大ヒットした『電車でGO』(タイトー)など、国内では鉄道運転シミュレーターはいくつも発売されています。私の『Train Drive ATS』もそのなかのひとつですが、従来の作品以上に “リアルさ”を追求しているのが大きな特徴です。タイトルにもあるように、現実の鉄道に導入されているATS(衝突や速度超過防止のための保安装置)の要素が加味されているほか、加減速度や勾配の抵抗などは綿密な物理計算を行い、線路や信号も、日本の鉄道の省令を順守して設計しています」

なかでも、Ito氏が特にこだわったのが「ダイヤグラム」。乗客が目にする時刻表の基となる列車の運行計画だ。

「運転士の視野(ゲームの画面)には存在しなくても、実際の路線上には複数の列車が走っているわけですよね。それを考慮しないと、通過待ちや追い越し、信号待ちといったイベントをリアルに再現することはできません。そのために必要なのがダイヤグラム。緻密なダイヤグラムの概念を導入したゲームは、『Train Drive ATS』がパイオニアだと思います」

左はItoさんの私物。右にあるのは、『Train Drive ATS』を制作するために考案したオリジナルのダイヤグラム

鉄道ファンならずとも、蜘蛛の巣のように繊細で複雑な鉄道のダイヤグラム(写真)を一度くらいは目にしたことがあるはず。Ito氏によれば、これこそが世界に誇る「日本の鉄道」の本質。この概念を導入したことで、『Train Drive ATS』は「日本の鉄道」を本当の意味で再現したゲームになったのだという。

「私は少年時代からの鉄道ファンなんですが、そのなかでも特に興味を持っているのがダイヤグラム。いわゆる『架鉄』というジャンルで、架空の鉄道について考えたり、現行路線のダイヤグラムの改善策を考えたりするのが好きなんですよ。そうした”趣味”があったからこそ、このゲームをつくることができたのだと思います」

好きなコトだからこそ、”自分のブラック化”にも耐えられた

趣味から生まれたものとはいえ、Ito氏には最初から「『Train Drive ATS』シリーズで生活できるだけの収益を上げる」という明確な目標があったという。そのために、ほかの仕事を完全に辞めてアプリ制作に挑んだというのだから、その覚悟は相当なものだ。

制作者のTakahiro Itoさんは、小学生の頃から鉄道ファン。このアプリをつくり始める前は、フリーランスのプログラマーとして生計を立てていた

「アプリ開発にそれなりの時間がかかることは経験上知っていましたから、本業の片手間に作業するといったやり方は最初から考えていませんでした。ただ、当初の見積もりよりだいぶ制作期間が延びてしまって、第1弾をリリースできたのは2年半後……。そのあいだは貯金を切り崩すしかなかったので、遊びに行く回数を減らすなど生活費を切り詰めてやりくりしました」

最初は半年ほどで完成すると見込んでいたそうだが、結果的にはその5倍の期間が必要だったわけだ。細部にこだわったことも一因だが、もっとも時間がかかったのは「デバッグ」(バグチェック)の作業だった。

「たとえば、いつまでも停止信号が解除されないという不具合が出たとするじゃないですか。その原因を突き止めるには、目視できる部分だけではなく、ダイヤグラム上で運行されているすべての列車の状況をチェックしないといけないんですよね。これに思いのほか時間を取られて、制作期間の半分をバグ取りに費やしてしまいました

ダイヤグラムをリアルに再現しているアプリならではの苦労。不具合を見つけては原因を探るという作業を、1年以上にわたってひとりでコツコツ続けたのだ。いちばん大変だった時期は、文字どおり起きた瞬間から寝落ちするまでPCに向かっていたという。

「これは、さすがにダイヤグラムが好きな人でないと気持ちが折れてしまう作業だったんじゃないでしょうか。でも、私の場合は最初から『好きなことをするんだから、請負仕事に対してコストを半分で計算できるな』と考えたんですね。自分の趣味の領域だから、労力や苦痛を半分くらいに見積もってもいいだろう、と。いわば『自分のブラック化』(笑)。それでも耐えられるのが、『好きなコトで稼ぐ』ことの強みなのかもしれませんね」

個人制作のアプリが、8,000万円超の売り上げを記録!?

最終的には、自らのダイヤグラム読解のノウハウをプログラム化し、専用のチェックツールを作ったというItoさん。このツールには、予想外の引き合いがあったそうだ。

「実は、現実の鉄道会社でもダイヤグラムのチェックは、知識や経験のある職員の方がほぼ手作業で行っているようなんですよね。そのため、私がつくったバグを見つけるためのプログラムを、実際の路線の運行チェックに使えないかと興味を持っていただいた鉄道会社さんもいたりして(笑)」

思わぬところから飛び出した技術転用の可能性。趣味で始めたものが現実の役に立つかもしれないとは、実に夢のある話ではないか。

こちらは、京王電鉄の車両を使った第2弾『Train Drive ATS 2』(iOSアプリ/ライト版 無料、フルバージョン 840円)。複数の鉄道ファンが制作に加わり、アナウンスなど細部が洗練された

核となる要素をほぼ個人の力で完成させた第1弾を経て、第2弾の『Train Drive ATS 2』は、車内アナウンスを担当する声優や、路線を考案する鉄道ファンたち、外国語版の翻訳者など、多数のスタッフとの共同で行われた。この2作を合わせたシリーズ全体の売り上げは、累計で8,000万円以上にも上るという。さらに、現在日本のとある鉄道会社から、車両はもちろん路線までを忠実に再現した完全コラボの新作制作を打診され、実現の方向に動いているとのこと。

ひとりの鉄道ファンがつくったゲームが、なぜここまでの広がりを見せることになったのだろうか。次回の後編では、『Train Drive ATS』シリーズが世界的な大ヒットアプリとなった理由を掘り下げてみよう。

「TrainDriveATS2 Demonstration Movie 01」(TrainDriveATS 公式chより)

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Train Drive ATS 公式サイト

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たとえばメッシと同じチームでサッカーできるかもしれない件

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……もちろんゲームの話ですけど

サッカーゲームやバーチャル・リアリティー(VR)に、自分や知り合いの外見そのもののアバターが登場したらどうだろう。あるいは、3Dプリンターで自分のミニチュアのフィギュアを作れたりしたらどうだろう。もちろん、3Dスキャナーと3Dプリンターと難しいアプリケーション・ソフトを駆使すれば不可能ではないだろうけれど、スマホを使って簡単にできたら……。

Dacudaは、「世界最小」ワイヤレススキャナーをKickstrterの力を借りて実現した、スイスのスタートアップ。特許SLAM Scan 3Dエンジンを使って、スマートフォン利用者が自分の姿をスキャンできる開発キットを公開している。




3Dスキャンのプロセス。スキャンした点をつないでメッシュをつくり、テクスチャを貼り付ける。利用者はスマホでスキャンの進行状況を確認しながらカメラの向きを調整してデータを取り込むことができる

SLAM Scan 3Dエンジンはすでに食べ物の3Dキャプチャーが可能なスマホ用アプリの3DAround、パスポートや運転免許を読み取るRapid Input MRZなどに活用されている。

ゲーム開発会社などで活用すれば、3Dの自分が登場するゲームが市販されるようになる。プロのサッカーチームや映画の出演者の顔をスキャンすれば、VRのリアリティーがより高まることになる。

ゲーム中のアバター。服装や持ち物などを自由に変えられる

こちらの動画ではiPhoneで3Dスキャンした自分の顔がゲーム内でアバターとして登場する様子を解説している

将来的には3Dプリンティング技術と組み合わせて、誰でも自分のフィギュアも自作できるようになるだろう。自撮りアバターが一般化すれば、ゲームやソーシャルメディアの表現力が新しいステージに進化するかもしれない。

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Dacuda

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サンタモニカに登場したhulu自転車は、好きな場所に乗り捨てOK!

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ロサンゼルス郊外の街、海の近くの観光地のサンタモニカで、ハイテク自転車のシェア・プログラムが人気だ。

昨夏に始まったこのプログラム、稼働している自転車は、スタート当初の60台から500台まで一気に拡大し、ハブ・ステーションは7カ所から、最終的には市内75カ所に増える予定だ。人気の秘密は、シェア用に特別に開発されたGPS内蔵のスマート自転車にある。

通常のバイクシェアは、借りたバイクを必ずステーションに戻さなければならないが、サンタモニカ市では、ステーション以外の公共バイクの置き場や、公園、学校、道ばたのポールなどに鍵をかけてとめれば、プラス2ドルで「乗り捨て」が可能なのだ。自転車を返却したいステーションがすでに自転車で満杯のときは、100フィート以内のどこかに路駐すれば追加料金はかからない。

道に乗り捨てられている自転車をステーションに返すと、1ドルのキャッシュバックがある。また、自転車を回収する専用の車両が市内を巡回しており、自転車をステーションに戻している光景が頻繁に見られるので、乗り捨て自由の運用でも特定のステーションに自転車が一台もない、という事態はあまり起こらない。

ステーションではなく「自転車1台1台」を管理する発想

市のフェスティバルで、スタッフがバイクシェアのプログラムと自転車の使い方を住民に紹介している

GPSで位置管理し、借りた場所とは違う場所に返却が可能なレンタサイクルサービスは、実は日本でも運用が始まっている。サンタモニカのシステムが新しいのは、個々の自転車がステーションハブ経由ではなく、直接クラウドに接続されていることだ。

リアルタイムGPSを利用して、「現在空いている自転車が、どのストリートのどの位置にあるのか」を、管理者だけでなくユーザーも自由にアプリやネットでチェックできる。また、ハブ・ステーションの電源が切れていても、ネットで事前予約したり、スマホにダウンロードしたアプリを使えば、その場ですぐ借りることができる。

管理システムには、ジオ・フェンス(バーチャルな柵)の機能があるので、サンタモニカ市外の道ばたに自転車が放置されてしまった場合は、罰金の20ドルがユーザーに課金される。この罰金を避けるため、市外に乗り捨てないように気をつける必要がある。ユーザーは、自分と自転車が市外に出てしまっているかどうかを、アプリの地図とGPSで確認できる。ただし、サンタモニカ市と隣接するベニス地域の海岸は、観光客に大人気のため、ベニス地域の一部では、市内扱いで駐車、乗り捨てできるようになっている。

万一自転車が盗難された場合は、走行できないように遠隔で自動ロックされる。色を塗り替えたりしても走らないから盗んでもムダ、ということになる。アメリカらしいシステムだ。

自転車につけられたキーパッド。乗り捨てられた自転車は回収車がステーションに運ぶ

日本と異なるアメリカの自転車通勤事情にも対応

利用料金は、サンタモニカ市の住民の場合、1年間の会費は約99ドル。1日上限60分まで乗れるシステムだ。延長分は分単位で課金される仕組み。この住民用年会費プログラムは、大きなバスの停留所や、最寄りのメトロの駅まで、通勤に自転車を使いたい人に人気だ。

日本と違い、電車の駅の近くに駐輪場がないアメリカの場合、自分の自転車を駅に置いたまま電車に乗ることはできないため、バイクシェアが重宝されている。このシェアプログラムでは前日に予約ができるので、朝、家の近くのステーションに行ってみたら自転車が1台もなかった、という状況が避けられる。

数時間から数日間、自転車を利用したいという観光客の場合は、1時間あたり6ドルのプリペイドカードがある。もっと長く乗りたければ、キオスクで追加入金すれば何時間でも延長が可能だ。

予約と貸し出しは会員番号をキーにして行う。予約はアプリに会員番号を入力し、貸し出し処理は自転車に装着されたキーパッドに会員番号を入力する。解錠・施錠はPIN番号入力で行う。まだ自転車を返却したくないが、ちょっとコーヒーショップに寄りたい時など、短時間、路上に駐車する場合は、「ホールド」ボタンを押せば、ほかの利用者が使えないようにできる。

人気レストランの前や、公園、ショッピングセンターの横など、人目につく場所にいつも数台の自転車がある状態なので、運動のため、ちょっと1時間だけ乗ってみようか、という気にもなりやすい。市営バスに乗る時は、自転車をバスの車体の外に乗せてもらえるのも利点だ。

直接管理でコストを抑えて普及を拡大

サンタモニカカレッジにあるハブ・ステーション

通常のバイクシェアは、ハブ・ステーションのキオスクに多額の費用がかかるため、コストの面で普及速度に限度がある。だが、スマート自転車を使い、ハブ・ステーション経由ではなく、自転車1台1台が管理システムとクラウドで直接つながり、アプリでも直接自転車を予約できるサンタモニカのプログラムの場合、キオスク設置の費用を抑えられる。それにより、普及のスピードが上がるという仕組みだ。

コストを下げるための方法として、もうひとつ有効なのが、広告収入だ。サンタモニカ市の場合、テレビ番組や映画のストリーミング・サービスでお馴染みのHuluの緑色のロゴがシェア自転車のカゴの部分についている。

つまり、カゴ部分を利用して、企業に広告スペースを売り、マネタイズできるのだ。企業側も、CO2を排出しない、環境にやさしい交通手段をサポートするというメッセージを、「街中を動く媒体」で伝えることができる利点があり、ウィン・ウィンの関係だ。

また、この夏開通したサンタモニカとLAダウンタウンをつなぐメトロ線の電車を利用する観光客にとっては、駅からサンタモニカビーチまでちょっと自転車で、という利用方法が可能になったことも利用者拡大への大きなプラスになっているようだ。

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サンタモニカバイクシェア

【TSスマホカメラ部 ⑥】「カメラマンに聞く、”響く飯テロ写真”の撮り方」

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スマホでの撮影テクニックを探求し、SNSでたくさんシェアしてもらう写真を模索するTSスマホカメラ部。今回のテーマは、「飯テロ」です。プロのカメラマンに、あなたのお友達やフォロワーの食欲を過剰にかきたてるグルメ写真、通称「飯テロ写真」の”響く”撮り方を指南してもらいました。

指南役としてお迎えしたのは、数々の雑誌や書籍でシズル感たっぷりの料理写真を撮影するプロカメラマン、森カズシゲさん。ただし、今日の撮影で使っていいのはスマホカメラのみです。果たしてプロと素人の写真ではいったい何が違うのでしょうか?

平日のランチタイムに「恵比寿焼肉 Kintan」を訪れた筆者(左、iPhone6sを使用)とキャリア20年以上のプロカメラマン、森カズシゲさん(右、iPhoneSEを使用)

【ポイント1】よい料理写真は、席選びから! 2つの光源で”シズル感”を演出すべし

編集Uが普通に撮った写真

欲を掻いて小鉢まですべて写そうとしたため、せっかくの肉のプレートが小さすぎる残念例。またメニューや箸立てなどが写り込み汚い印象も。外光と照明がミックスされていないので、画面左が青白く、右側が黄色くちぐはぐな印象。ひと言でいうと、美味しそうに見えない……

プロカメラマン・森カズシゲさんの写真

光がお皿のなかに集まるよう、右斜め後ろから外光を取り入れつつ、上からの照明で肉の表面に黄色い光の粒を集めている。2種類の光のバランス次第で、同じスマホカメラでもこんな写真が撮れるんです。同じテーマで撮った写真とは思えないほど美味しそう!

――早速ですが、飯テロ写真を撮影するにあたってのポイントを教えてください!

2人の座り位置に注目。森さんは外からの自然光と、室内の照明をうまく利用できる位置に陣取っています。ズルい!

森さん(以下、森) まず、大事なのは「席選び」です。というのも、写真にとっていちばん重要なのは「光」なので、奥の暗い席より、なるべく明るい窓際の席を確保することが大事なんです。

――席がすでに埋まっていたり、地下だったり、夜だったりすると、その時点でゲームオーバーっぽいですが……。

森 屋内でもテーブルに向けられているライトや、壁一面が光っているような照明があればなんとかなりますよ。とにかく大事なのは「料理に向かって、2方向からの光がバランスよく射し込むこと」。ベストは、お料理の斜め後ろから太陽光(白い光)が射し込んできて、店内の照明(黄色い光)が上から降り注ぐポイントを探す。光がキレイにまわると、瑞々しい生肉の上に光の粒がいっぱい溜まってキラキラするんです。これが、他人が写真を見て「食べたい!」って思う「シズル感」なんですよ。

――となると窓からの光がさえぎられる場所はNGってことですね。

森 そうです。前にお友達が座っているときは、撮影中ちょっとよけてもらったりしましょう。2つの光のバランスが決め手になるので、料理を注文して待っているあいだ、お冷ややスパイス瓶などを使って「試し撮り」するといいでしょう。料理によってはみるみる冷めていったり、水分が飛んだりして、おいしそうな瞬間がすぐ終わってしまいますからね。

【ポイント2】盛りつけには理由がある。料理の”正面”を探すべし

編集Uがちょっとがんばって撮った写真

角度をつけて皿を大きく写しているものの、ご飯が手前になり、せっかくのカレーが奥に小さく写るという残念な1枚。背景の網も余計だし、汚れたお皿も拭き取ってあげたい

プロカメラマン・森カズシゲさんの写真

主役のカレーを手前にレイアウト。特に売りであるゴロゴロしたお肉が目立つように向きを調整し、肉の輪郭が出るように光の粒を集めている

――いよいよ、お料理が来たら、どんなことに気をつければいいですか?

盛り付けがよくない時は自分で仕上げるつもりで整えましょう。なお、森さんはお店のメニューを裏返し、光を反射させて暗い部分を照らす「レフ板」として使っています。ズルい!

森 まずは「料理の正面」を探します。実は料理には必ず「ここから撮って欲しい」という面があるんですよ。よくわからないという方は「添え物は後ろ」と覚えましょう。丼の漬け物や、カレーのご飯、ハンバーグのつけあわせ野菜などは、絶対に手前には来ないですからね。メニューの写真がプロによる撮影なら、料理の向きを意識して撮られているはずです。その写真を見ながら、どこが正面にあたるのかを判断するのも手ですね。

――もし、そのお店が味にはこだわるけど、盛りつけに無頓着だったら……?

森 盛り付けが悪かったり、お汁が飛び散っていた場合は、自分でイジったり拭き取ったりして「正面」をつくってあげることも必要です。お客さんに出すための料理の盛りつけと、写真映えのする盛りつけは微妙に違いますから、いずれにせよ微調整はした方がいいでしょうね。

【ポイント3】構図に迷ったら、とにかくズーム。料理に奥行きをあらわすべし

編集Uが空腹に耐えながら撮った写真その1

肉がただ一直線に並び、上下のすき間が大きすぎるダメな作例。網の面積の方が大きく、色みも暗いのでまったく美味しそうに見えない。もう少しズームでお肉に寄っていきたい

プロカメラマン・森カズシゲさんの写真

肉に寄り、光の加減を見極めることで、うしろに揺らめく炎やほのかに立ちのぼる煙をとらえた。また、肉だけだと暗い印象になるので、パプリカやピーマンを並べて色のバランスを取っているのもポイント

編集Uが空腹に耐えながら撮った写真その2

真上から撮っているため、全体的にのっぺりとして平坦な印象に。今日食べたものの記録にはなるかもしれないけれど、SNSにアップしたところで「いいね!」はつかないでしょう。自分の影が入ってしまっているという初歩的なミスも

プロカメラマン・森カズシゲさんの写真

真ん中のモツにピントをあわせることで奥行き感が出ている。あえてガラス製のサラダ鉢を入れたのはすき間が埋まり、画面が引き締まるため。両端を少し切ることで、その先を想像させる効果もあるとか

――ほかに気をつけておきたいポイントってありますか?

森 いろいろありますけど、迷ったらとにかくズームして、料理に「寄る」のが大事ですね。寄ることで、テーブルの上のお手ふきやメニューみたいな余計なものが写らなくなりますし、角度をつければ奥行きが出ます。その際、手ブレしやすくなってしまうので、肘をテーブルやソファにくっつけて、しっかりシャッターを切るのが大事ですよ。

そんなこんなで、同じスマホカメラを使ったにもかかわらず、プロと素人の差が歴然と現れた今回の撮影。料理写真のポイントがいくらかわかったところで、森さんからの注意をひとつ。

森 あんまり撮影に手間暇をかけていると一緒に来た人や、周りのお客さんの迷惑にもなりますし、だいいち熱々のお料理がどんどん冷めてしまいますからね。素人の写真には素人なりのライブ感があったりもしますし、丁寧な写真はプロに任せて(笑)、まずはお食事を楽しんでください!

【おまけ】



左:ようやく食べられる段になり、編集Uが右手で持ち上げた肉を左手で撮影。「箸あげ」はシズル感を演出するテクながら、ピンぼけではその喜びも伝わらない/右:「ピンぼけするくらいの方が、ライブ感があって食欲をそそったりするんだよね」と、森さんがさらっと撮った写真。ライブ感を表すにも、基本が大事なのだということがよくわかる2枚です

【取材協力】
恵比寿焼肉 kintan
東京都渋谷区恵比寿西1-10-3 トラストリンク恵比寿ビル1F/2F

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【ICT×MUSIC #5】 スマホジャックの次は花火とシンクロ!? 衝撃MVで注目を集める「リリカルスクール」

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こんにちは、J-WAVEの小松です! インターネットや通信と音楽の新しい可能性を探る連載企画「ICT×MUSIC」第5回は、アイドル戦国時代に6本のマイクで挑むlyrical school(リリカルスクール)を紹介します。リリカルスクールなんか知らないし、アイドルなんて……というそこのあなた! 時代について行けなくなるので、まずは立ち止まってください。

MVをきっかけにSNSで爆発的に知名度がアップ

いま会えるアイドルを筆頭に、メタル系アイドル、ぽっちゃり系アイドル、就活系アイドル、ヤンキー系アイドル……調べると出てくるわ出てくるわ。まさにアイドル戦国時代。あったようでなかった系アイドルがそれぞれの個性を武器にシノギを削っているわけですが、当然と言えば当然、出てきました! 清純派ヒップホップアイドル!! 唯一無二の6本マイク!!!!!!

そうです、今回紹介するリリスクことリリカルスクール。少し経歴を調べると、結成は2010年。メンバーチェンジを繰り返し、2014年には「ROCK IN JAPAN FES」にも出演、2015年には全国ツアーを成功させています。そして満を持して、2016年に「RUN and RUN」でメジャーデビュー。

と、偉そうに書いていますが、私がリリスクを初めて知ったのはSNS上でした。おそらく多くの方が私と同じようにSNSをきっかけに、同じタイミングでリリスクデビューしたと思います。そう断言できるぐらいSNS上で話題になったのが、メジャーデビュー曲「RUN and RUN」のミュージックビデオでした。

なぜ話題になったかというと、まずひとつはスマホで見やすい縦型動画だったから。見たら即シェア、即いいね! できるんですが、まあでも、これまでも縦型で公開されたミュージックビデオはあるので、そんなに珍しいかといったらそうでもない。だったらなんでかというと、まずはモノは試し。ぜひ”スマホで”見てみてください!

スマホをジャックされた感覚になるユニークなMV

最初は戸惑ったんじゃないでしょうか? 私は急に自分のスマホが壊れたかと思いましたよ。そうです、もうひとつの話題になった要因がスマホジャック

カメラ機能、Facetime、Twitter、あらゆるアプリケーションを使い、曲と連動して歌詞や本人たちが登場。まるで自分のスマホが何者かにジャックされ、勝手に操作されている感覚。画面にアプリ通知が出てきては操作され、続々とアプリが移り変わっていく。なになになに! どうなってるの!? ってな感じで目がひとときも離せません。こちら、世界最高峰といわれる広告フェスティバル「カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバル」サイバー部門銅賞を受賞しまして、国内のみならず世界で話題をかっさらったわけです。メジャーデビュー曲にしてこのクリエイティビティは間違いなくアイデア勝ちですね。

あ、そうそう、大事なことを忘れていました。シェア、いいね! したくなるもうひとつの大事な要因……かわいいんです! さすがアイドル! かわいい女の子6人が自分の携帯のなかで楽しそうに歌って踊ってるんです。もう目が離せませんよね!

それに加えて、個々のメンバーのことを知れば知るほど魅力的なんです。たとえば、yumiさんは美大出身で、大好きな寿司をモチーフにしたTシャツや作品などの制作も。なかでも彼女のInstagram”寿司stagram”は衝撃です。またminanさんは、とある企画で練習し始めた電子楽器MPCを使って、自身で演奏しながらラップするという動画をYouTubeで配信しています。楽しそうに演奏している姿がとてもいい!

……という感じで全員の特徴を紹介したいところですが、長くなってしまうので、ぜひみなさんチェックしてみてください!

最新MVは実際に花火大会とシンクロ

そんな話題のリリスクですが、先日リリースした2ndシングル「サマーファンデーション」のMVでも見たこともない&誰もやろうと思わない素晴らしいアイデアを仕掛けています。きっと世界初!? なんと7月2日に兵庫県相生市で開催された相生ペーロン祭 前夜祭海上花火大会とコラボレーションし、主催者から事前に入手した進行プログラムに合わせてダンスの振り付けを綿密に構築し、シンクロさせているんです!

花火大会に合わせる、一発勝負のなかの一発勝負。まさにライブだから生まれるものがある。本人たちはもちろん、スタッフの鼓動や息遣いまで聞こえてきそうな緊張感のある映像。そんななかでも楽しそうに歌い、踊る彼女たちはやはりアイドルなんだなと強く感じました。

無重力空間での撮影やドローンを使用するなど、MVが毎回話題になるUKのバンド、OK GOのように、日本のアイドル、リリスクが世界で話題になる日はそう遠くないかもしれません。これを機に、今後の彼女たちの活躍をお見逃しなく!

lyrical school(リリカルスクール)

ami、ayaka、mei、yumi、minan、himeの6人からなるガールズラップのパイオニアグループ。2010年の結成当時は、清純派ヒップホップアイドルユニット、tengal6として活動。その後、グループ名を現在のリリカルスクールに改名し、シングル8枚・アルバム2枚をリリースする。2016年4月に満を持して、シングル「RUN and RUN」でメジャーデビュー。縦型スマホジャックMVがネットを中心に大きな話題となり、同MVは「カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバル」サイバー部門銅賞を獲得。7月6日にリリースされたニューシングル「サマーファンデーション」のMVでは、ダンスやサウンドと花火をシンクロさせた世界初(!?)の試みに挑戦し、再び大きな注目を集めている。

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lyrical school オフィシャルウェブサイト
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【TSスマホカメラ部 特別編】夏の花火をスマホで超絶綺麗に撮るテクとは?

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写真を撮りまくることになる季節の到来である。ちょっと出かけると絶対撮るよね! 観光地とか海とか花火大会とか。人類はもしかしたら写真を撮るために夏のレジャーの内容を決めているのかもしれない……などという論考はここでは追究しない。が、恐ろしいことに、その三大怪獣が揃い踏みするイベントが開催されてしまったのだ。auとぴあが共同で手掛けるエンターテインメント情報サイト「uP!!!」による全国花火大会観覧席の招待企画。そのなかでも特に人気の高い、クルーズ船から花火が見られるという横浜・山下公園の花火大会である。※

※「uP!!! Presents 横浜花火クルーズ2016」会場にて、「AQUOS SERIE SHV34」を掲げるオッサンとオッサン。auスマートパス会員限定で割引(通常ペア30,000円→10,000円)を受けられ、ここから豪華クルーズ船マリーンルージュに乗り込む。ビュッフェで飲み食いしながら3,000発のダイナミックな花火を撮りまくるのである

7月の連休、呼び出されたので行ってみると、旧知のカメラマン・イナダペイがフィリピンの郷土料理の串焼きをかじりながら佇んでいた。断片的に知らされた情報を組み合わせると、どうやらカメラ機能が非常に優れた新スマホ「AQUOS SERIE SHV34」という機種を使って、ライターたるおれとカメラマンたるイナダペイとで、花火撮影対決をせよ、というのがテーマであることがなんとなくわかった。

なるほどなあ、とうなづき合うオッサン二人たちの横を、次々と浴衣のカップルが通り過ぎていく。

「……浴衣モデルちゃん同士の対決にした方が良かったんじゃないのか」
「おれもそう思う」

オッサン1はライターであり、オッサン2はカメラマンである。仕事で一緒になることも多いが、役割分担ができているので、これまで「写真の撮り方」など聞いたことがなかった。しかし、今回は「スマホカメラ部特別編」である。オッサン1はオッサン2に尋ねてみた。

「なあなあ、どうしたら花火ってキレイに撮れるの?」

Q.どうすれば花火ってキレイに撮れるの?

A.その1 暗めに撮るべし。

下の写真をご参照あれ。さあ、どっちがキレイ? 上がキレイで、下はそうでもなくない? ここにははっきりとした撮り方の秘密があるのである。

稲田平=撮影(AQUOS SERIE SHV34/おすすめプラス、フルマニュアル)

武田篤典=撮影(AQUOS SERIE mini SHV33/おまかせオート)

夜空に打ち上げられる、ということを意識するあまり、なんとか明るく撮ろうとするのは間違い。花火には意外と光量があるので、あまりに明るくすると花火の火花が白っちゃけてしまう。ひいては煙が白く浮き上がってしまう。上下の作品を見比べると、上の写真ではきちんと花火の緑色やピンクが表現されている。一方、下の写真は横浜港に現れた巨大なエクトプラズムのようにしか見えない。「花火行ってきたよ! これ写真!」と、到底自慢できるものではない。

A.その2 地面や人を入れ込んで構図をつくる

花火を撮りながら、人とか背景とかが入っている上の写真に対して、まさに花火だけを潔く捉えた下の写真。さて、どっちがいいのかというと……。

稲田平=撮影(AQUOS SERIE SHV34/おすすめプラス、フルマニュアル)

武田篤典=撮影(AQUOS SERIE SHV34/おすすめオート)

上が構図のある例。下は構図のない例。下の写真、さっきとは違い、暗い背景にそこそこ青と白の色目が出ている……という点は評価できる。けれど、なぜ花火のどアップ!? どこのどういう花火なのかがこの写真からは一切伝わってこないのである。いわば、名所旧跡で記念写真を撮るのに、背景を何も入れず人物のどアップ写真を撮るがごとし。花火を撮る際は、どこのどういう花火なのかを、きちんと画面上で表現したい。背景にポートタワー、手前の海上に屋形船、そのさらに手前に観客を入れた上の写真は叙情も情報もバッチリだ。

A.その3 手ブレに気をつける

被写体が花火であろうとなかろうと、気をつけなければならないポイントである。当たり前すぎて見出しにするのが恥ずかしいほど。でありながら、意外に守れていないのがこれ。スマホカメラの性能を過信すると、結構ブレブレになるのである。で、結構ブレブレな写真は「ヘタクソさ」を突きつけられる感じがして、恥ずかしいのである。



左・稲田平/右・武田篤典=撮影(ともにAQUOS SERIE SHV34)

みなさんは写真を撮影しているカメラマンの姿を見たことがあるだろうか。何かというとすぐ三脚を使う。使えないシチュエーションだと、脇を締めてガッチガチにカメラを構える。この写真には写っていないが、カメラマン・イナダペイ、このスマホを手渡された瞬間に粘着テープを貼り付けて、取っ手のようなものを作成した。それほどブレないように細心の注意を払うのである。ということを踏まえて右の写真を見られたし。

上のイナダはスマホをがっちりと握り、手すりや壁にスマホを持った手を押し付けて、完全に固定している。片やおれは、片手でカジュアルに、人生舐めきったような態度で撮っている。仕上がりは言わずもがな。「ブレて斜めになっていること」を「味わい」と言い切ることができれば。右の写真もないではない。でも、ないよな……。ない。

A.その4 花火撮影モードに全力で頼る

……と、ここまで、オッサンカメラマンにオッサンライターが教えを請い、カメラ技術を習得しようと試みたわけだが、プロの壁は厚い。フツーに勝負していては勝ち目はないのである。で、秘策の登場だ。果たしてどうなったのかというと……。

武田篤典=撮影(AQUOS SERIE/花火撮影モード)

どうよ! 花火の色もきちんと出つつ、背景をしっかり画像に収めて、会場で行われた花火大会であるということも伝えつつ、ブレてもいない! 完璧な花火写真である。じつは、まさに誂えたかのような「花火撮影モード」が、この「AQUOS SERIE SHV34」に搭載されているのである。

この花火モードでは、露出やシャッタースピードをいい感じに調整してくれるだけでなく、夜空にスマホを向けておくだけで、花火が炸裂したタイミングで自動的にシャッターを切ってくれる。花火撮影の際にもっとも失敗する確率の高い、「シャッターを切るタイミング」をカメラがやりおおせてくれる。なにより、シャッターボタンを押す必要がないというのは、デカい。

というのも、夜空に向けてシャッターを切ると、その瞬間に手ブレが発生する。花火モードをONにしておけば、押す度にスマホが揺れる恐れがなくなるのである。しかも、花火を目視しなくても、花火の方向に向けておくだけで写真が撮れる。これだけのアドバンテージがあれば、プロフェッショナルフォトグラファー・イナダペイを凌駕できるような、できないような。


花火モードのシャッターは、花火が炸裂するたびに切られ続けるので、こんな風に連写される

ちなみにプロカメラマンってスマホで撮ってもウマイの?(料理編)

花火に限らず、最近のスマホカメラの性能的には、どんなふうに撮ってもまあまあそこそこキレイに写る。なので、あとはセンスの問題なのである。たぶん。たとえば料理を前にしたとき、どうやって皿を配置して、どんな具合に撮影するか。マシンが技術を補ってくれるなら、アイデア次第で素人がプロに負けない写真を撮れるのではないか? ええ、撮ってみましたとも!

武田篤典=撮影(AQUOS SERIE/おすすめオート)

稲田平=撮影(AQUOS SERIE SHV34/おすすめプラス、フルマニュアル)

嗚呼、しまったーーーーッ! ビュッフェスタイルの料理をどう盛り付けて、どういうシチュエーションで撮るかで雌雄が決するというのに、武田篤典のほうは、ネタに走ってしまった。お皿に料理で顔を描く以上、真上から撮らないと絵にならない。で、こんな構図になってしまったわけだが……。

実は、AQUOS SERIEには「フレーミングアドバイザー」なる機能が搭載されているのである。様々な被写体に最適な構図を実線で画面上に表示してくれる。で、左の白線が「料理1」のフレーミング。皿の一部を画面からはみ出させることでポイントが絞れる撮り方らしい。おれの写真は、この構図に合わせなかったが、奇しくもイナダカメラマンの構図が、これにぴったりではないか! 期せずして、フレーミングアドバイザーの実力を示す結果となった。

ちなみにプロカメラマンってスマホで撮ってもウマイの?(人物編)

ここまで、「人物」といえばオッサン二人しか出てこない。周りには「横浜・山下公園で花火を見に来た」お洒落カップルたちが闊歩しているというのに! なので、イケてる浴衣の男女をキャッチ! ライターVSカメラマンで、デッキで撮影対決してみた。

おお! 途端に、夏休みの情報誌的なムードが漂い始めた! ああ、もっと早く撮っておけばよかったぜ……。

稲田平=撮影(AQUOS SERIE SHV34/おすすめプラス、フルマニュアル)

武田篤典=撮影(AQUOS SERIE/おすすめオート)

さてさてどうでしょう。上がカメラマン・イナダペイの写真、下がおれ、ライター・武田篤典の写真である。よくわからないが、イナダペイはマニュアルモードで、露出やシャッタースピードを細かく設定した上で撮影に臨んだ。一方のおれは、「おまかせオート」モードを選択して撮影しただけ。

あくまでもオートで撮ったので、そこにどんなマジックが働いたかは謎なのだが、おそらく、HDR(ハイダイナミックレンジ合成)。というヤツが効いているのではないかと推測される。HDRとは、レンズに入ってくもっとも明るい光ともっとも暗い光を感知して、何枚かの写真を撮り、すべての箇所が明るく写るように合成する技術のことだ。どうすか? 上の写真と下の写真、なかなかいい勝負じゃないっすか?

かくしてTSスマホカメラ部 特別編は終了。あえて結果っぽいことをいうなら、「カメラ技術を持ったうえで、「AQUOS SERIE」で撮ると、たぶん最強。でも、カメラ技術がなくても、「AQUOS SERIE」があれば、そこそこ満足いく写真が撮れる。2016年夏の思い出は、オート機能にお任せ、といったところでいかがでしょうか?
「uP!!! Presents 2016全国花火大会観覧席ご招待」

全国で開催される「花火大会」から、注目大会をピックアップ。
人気の観覧席の無料招待などオトクなキャンペーンをお見逃しなく!

応募資格
・auとご契約の方でauスマートパス会員の方
※上記に加え、uP!!!の会員登録も必要となります。

応募期間
7/12(火)12:00~7/25(月)12:00

受付ページ
https://www.up-now.jp/articles/id/60845

お申し込みに関するお問い合わせ
question@pia.co.jp
営業時間10:00~18:00 土日祝除く
※メールの本文に”お名前”と”お電話番号”を必ずご明記ください。申込結果に関するお問い合わせはお答えできません。

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「AQUOS SERIE SHV34」

※掲載されたKDDIの商品・サービスに関する情報は、掲載日現在のものです。商品・サービスの料金、サービスの内容・仕様などの情報は予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。

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au SHINJUKUで懐かしのガラケーを再起動したら、あの写真が出てきた!

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ガラケーの再起動とともに思い出がよみがえる

携帯電話が誕生して30年目を迎える今年。TIME & SPACEではそんな記念イヤーに合わせて「おもいでタイムライン」と「ケータイ図鑑」という特別コンテンツを発表してきました。

そして去る7月14日~18日。企画の第3弾としてau SHINJUKUで開催されたのが、リアルイベント「おもいでケータイ タイムトラベル」です。イベントの概要をサックリご説明すると、「みなさんのお家に眠っているガラケーをお持ちいただければ、充電して再起動いたします。保存してある画像も印刷できます。懐かしのガラケーもたくさん展示してますよー」というもの。今回は先日、学生時代の甘苦いメールを白日の下に晒されて恥ずかしい思いをした筆者が、イベントの様子をレポート。編集部員Oを連れて行き、同じ思いをさせてやろうという作戦です。

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会場には「auケータイ図鑑」に掲載されている約700機種から、選りすぐりの約60機種を展示。「うほ! 懐かしぇーーー!」という機種と遭遇できます

なかなか現物をみることができないIDO初の「ショルダーフォン」も。重さは約2.6kgということで、見た目にもかなりの重量感があります。これを肩にかけて使っていたなんてビックリ!

持ち込んだガラケーから写真を印刷してもらって満面の笑みの編集部員O。おそらくauショップに他社端末を持ち込んだ最初の男だろう

今回は編集部員Oが、かつて使っていたガラケーを持参し、再起動してもらうことに。ところがなんとO、ここにきて「僕、他社ケータイユーザーだったんですけど大丈夫スかね!」と、若干明るめな感じで告白してきた。

「TIME & SPACE presented by KDDI」編集部員としてあるまじき背信行為だが、しかし、心配ご無用。今回のイベントでは、なんと取り外し可能なリチウムイオン電池式のガラケーであれば、auのケータイでなくとも充電できるのだ。ハァ~ッ、太っ腹!

こちらがガラケーのリチウムイオン電池を復活させる機械。電池ごとに最適な電気的条件を識別して、個々に合った充電方式で回路を復活させてくれる仕組みなのだそうです

機械にリチウムイオン電池を差し込んで5分ほど充電すると、見事復活。起動画面ですら懐かしい! いったいどんな黒歴史が見つかるかとニヤニヤしながら見守っていると……。「あっ!」と声を上げる編集部員O。

フォルダに残っていたのは、かわいらしいニャンコの画像でした。「実はこの子、いま糖尿病を患っていて……。元気だった子猫のころの写真をもっと撮影しておけばよかったと思っていたんで、なんだかうれしいです。au最高ですね!」(編集部員O)

その後、残っていたデータをひと通り確認し、役目を終えたガラケーはショップに回収してもらいました。最後の別れを惜しんでガラケーを見つめる編集部員Oを見て、こちらまでちょっぴりおセンチ気分に。

恥ずかしい写真とかメールが出てきて笑い倒してやる作戦だったアテは外れたけど、まぁ、ニャンコがかわいいから許すことにします。

編集部員Oのケータイから発掘されたニャンコ写真。画質はいまのスマホには及ばないが、「写メ」独特の味があります

思い出が詰まったケータイでタイムトラベル! イベントのきっかけは?

広報部メディア開発グループの西原由哲

イベント期間中は、懐かしのガラケーを持参した人で賑わいました。ガラケーを再起動させてみると、いろいろな思い出がフラッシュバックして、懐かしい気分に浸れた人も多かったようです。今回開催された「おもいでケータイ タイムトラベル」の背景を広報部メディア開発グループの西原由哲に聞きました。

「携帯電話が誕生して30年を迎えた今年、せっかくならこの節目の年に『ケータイとみなさんの思い出を結びつける企画をやってみたい』と考えたのが、そもそもの始まりです。TIME & SPACEではその企画の一環として、今年の3月に『おもいでタイムライン』、5月にはこれまで発売された700機種以上の携帯電話を紹介する『auケータイ図鑑』を公開しましたが、予想以上の反響がありました。

『懐かしい!』『これ、使ってた!』とSNSでシェアしてくれる人もいれば、なかには『auケータイ図鑑』のなかから自分が使っていた歴代の携帯電話をピックアップして、ブログに『私のケータイ史』を書いてくれる人もいたんです。

そんなみなさんの反応を見ていると、携帯電話を通して思い出と再会する感動をリアルなイベントで体験してもらいたいと思いました。今回はauだけでなく、他社さんの携帯電話の充電も可能にしたのは、きっとその感動はどのキャリアであっても体験できると思ったからです。

私も昔のガラケーを再起動してみて感じたのですが、携帯電話って一見、無機質なんですけど、そこにはたくさんの思い出が詰まっているんですよね。イベントを通して、ひとりでも多くの人が『こんなことあったな』『あんなことあったな』と感じてもらうとともに、auやKDDIをもっと身近に感じてもらえたらうれしいです」

TIME & SPACEでは、今後も「ケータイとみなさん」を結びつける企画を計画中。お楽しみに!

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【TSスマホカメラ部 特別編】au2016夏スマホ4モデルの”自慢のカメラ”で撮り比べてみた!

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いよいよリリースがはじまったau2016年夏モデル。今回のスマートフォン新モデルはいずれも様々な面で進化を遂げているが、とりわけ注目すべきなのは“カメラ機能”だ。各モデルでレンズの明るさやシャッタースピードといった機能が大幅に強化され、美しい写真をより手軽に撮れるようになった。

そんなau2016夏の新モデルのなかから、「Galaxy S7 edge」「Xperia X Performance」「HTC 10」「AQUOS SERIE」の4モデルをフィーチャーし、それぞれのカメラ機能を検証していこう。

左から「Galaxy S7 edge」、「Xperia X Performance」、「HTC 10」、「AQUOS SERIE」

カタログやサイト等に記載されている各モデルのカメラ機能の主な特長は下記の通り。

Galaxy S7 edge

◯世界初、デジタル一眼レフカメラ技術搭載で超高速オートフォーカスを実現
◯F値1.7レンズ×大型ピクセル
○薄暗い場所でも素早いオートフォーカス

Xperia X Performance

◯Xperia史上最速 約0.6秒起動・撮影
◯先読みフォーカス機能
◯約2,300万画素カメラ搭載。細部まで高精細な描写力

HTC 10

◯メインとサブ、両方のカメラに光学式手ブレ補正搭載
◯F値1.8×ウルトラピクセルセンサー
◯高速レーザーオートフォーカス

AQUOS SERIE

◯約2,260万画素 &本格デジタルカメラ水準「GR certified」取得
◯AQUOS史上最速の高速起動&ハイスピードAF

カメラに詳しい人なら、それぞれの機能やスペックがなにを示しているのか、ある程度は理解できるだろう。しかし、カメラについてあまり詳しくない人にとっては、「スペックを見てもピンとこない」というのが正直なところだろう。

論より証拠。カメラ機能の特長を確かめるには、実際の写真の仕上がりを見るのがいちばん。そこで今回は、各モデルで撮影した写真を通して、それぞれのカメラ機能の実力をチェックしていくことにしよう。

なお、今回各モデルのカメラ機能を検証するにあたって、公平を期すため、次の3つをルールとした。
・同じ条件で、同じ被写体を撮影する。
・撮影はすべてオートモードで行う。
・撮影後の補正等は施さない。

【1】:夜の街並み&照明の暗いレストランで料理を撮る!

まずはそれぞれのモデルで、夜の街並みと、照明の暗いレストランで料理の写真を撮ってみた。いずれも光量が少なく、きれいに撮るのが難しいとされるシーンだ。

以上2点は「Galaxy S7 edge」で撮影。F値1.7の明るいレンズを搭載し、ピクセルサイズの大型化により受光面積が広いため、暗いシーンでも明るくノイズの少ない写真を撮ることができた

以上2点は「Xperia X Performance」で撮影。細部までくっきり鮮やかな描写力は、本格デジカメ顔負け。大型センサーのおかげで、暗い場所でも明るくクリアな画質だ

以上2点は「HTC 10」で撮影。F値1.8の明るいレンズや、光をより多く取り込む独自のHTC Ultra Pixel™といったこのモデルの特徴が生かされ、フラッシュなしでもきれいに撮れた

以上2点は「AQUOS SERIE」で撮影。リコー「GRシリーズ」開発メンバーによる画質認証プログラム「GR certified」を取得していることや、F1.9の明るいレンズといった特性が生かされているのだろう、夜景も料理も簡単かつきれいに撮影することができた

一般的に、光量が少ないシーンでの撮影は、ブレたりノイズが出たりしがちだ。しかし今回検証した4モデルはいずれもそのようなことはなく、色調や明るさ、コントラストの出方に違いはあるものの、明るく鮮明に撮ることができた。

【2】お散歩中の犬の写真を撮る!

次に、海辺の公園をお散歩中の犬の写真を撮ってみた。

「Galaxy S7 edge」で撮影。このモデルの特徴は、世界初のデジタル一眼レフカメラ技術を搭載し、超高速オートフォーカスを実現していること。動いている犬でもピントあわせがクイックに行えた

「Xperia X Performance」で撮影。このモデルの追尾フォーカス機能は、タッチした被写体の動きを予測して、フォーカスをあわせ続けてくれる。動きまわる犬の撮影にはぴったりの機能だ

「HTC 10」で撮影。このモデルは高速レーザーオートフォーカスを搭載。フォーカスをすぐにあわせることができ、撮りたい瞬間を逃さない

「AQUOS SERIE」で撮影。このモデルは最速0.02秒でピントがあうハイスピードAFを搭載。また、約0.4秒という高速でカメラアプリが起動するので、突然のシャッターチャンスにもすぐに対応できる

絶えず動き回っている犬は、撮影することが難しい被写体のひとつ。しかし今回検証した4モデルはいずれも起動やフォーカスが速く、撮りたい瞬間を逃さず撮ることができた。今回の被写体は犬だったが、じっとすることができず元気に動き回っている小さな子どもを撮影するときにも良さそうだ。

【まとめ】

今回の検証を通じてわかったことは、4モデルはいずれも「暗所に強い」「起動やフォーカスが速い」という特長を備えているということ。暗い場所や動くものは、きれいに撮ることが難しい被写体の最たるもの。それらがスマートフォンで手軽に簡単に撮れるようになったというのは、ひと昔では考えられないことであり、近年のスマートフォンのカメラ機能の進化には驚くほかない。

なお、いずれのモデルも優れたカメラ機能を備えているが、実際の色味や撮影モード等はそれぞれに個性がある。また、カメラを構えたときの感覚やシャッター等の操作感もモデルによって異なる。そればかりは実際に使ってみるほかない。ぜひ店頭などで実際に触って確認してもらいたい。

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au NEW SELECTION 2016夏モデル

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SiriとGoogle Nowの強敵現る! 「Viv」とは!?

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開発者はSiriの生みの親だった

2016年5月、画期的なパーソナルアシスタントサービスが発表された。その名は「Viv(ヴィヴ)」。ラテン語でLiveの意味だそうで、既存のApple「Siri」や「Google Now」の強力なライバルになりそうだとの噂がしきりだ。いったいなにが違うのか? その前に、Vivが生まれた背景をひもといてみよう。

Vivの開発者のひとりであるダグ・キトラウスさんは、実はAppleのiOSに搭載されているSiriの生みの親であり、Siri社のCEOだった人。Siriは2010年にサードパーティアプリとして公開されたのち、Siri社自体がAppleに買収される。そして、このアプリとしてのSiriは、翌2011年登場のiPhone 4Sから搭載され、いまやiPhoneユーザにとってはなくてはならないおなじみの機能となっている。

一方、生みの親であるキトラウスさんは、やがてAppleを離れると、2014年から、いわばもうひとつのSiriとでもいうべきVivの開発を本格化させた。そして2年の歳月を費やし、ついに満を持しての発表となったというわけだ。

検索だけでなく、決済まで対応する賢さ

今あるパーソナルアシスタントサービスとVivが大きく異なる点は、「Viv自身がリアルタイムでプログラムをつくっていくことだ」とキトラウス氏は言う。なんのこっちゃ!? どうも、学習機能を持つ人工知能(AI)の最新技術を用いたアプリだということらしい。

キトラウスさんがおこなったデモンストレーションでは、「明後日の夕方5時、ゴールデンゲートブリッジは華氏70度よりも暖かい?」と質問すると、Vivは「いいえ、70度より暖かくはありません」と答えるだけでなく、親切に天気予報も表示してくれた。

そんなふうに、Vivは自然言語のケタ外れな解析能力を持っている。文章の要素を抜き出し、内容を理解し、その先に求められるであろう行動を予測するのだ。ピザを注文したいと話せば、「トッピングはなににしますか?」というところまでVivは面倒見てくれるというわけだ。

実際、デモンストレーションでは、キトラウスさんとVivのあいだでこんなやりとりがなされた。

キトラウスさん「ママに誕生日プレゼントの花を送って欲しいんだけど」
Viv「どれになさいますか?」(買い物アプリと連動して、花束の見本をいくつかスマホのディスプレイに表示)
キトラウスさん「チューリップがいいかな」
Viv「チューリップはこちらです」(チューリップの花束をいくつか表示)
キトラウスさん「きれいな花束がいいな」
Viv「購入しますか?」(ひとつの花束を推薦)
キトラウスさん「うん、それがいいね」
Viv「手続き完了。花束は配達中です」(画面に決済情報が表示される)

――という具合に、Vivと会話するだけで花束を選んで配達するまでが、まるで花屋のお姉さんと面と向かって話しているような感じでできてしまうのだ。

これが2016年5月におこなわれたデモンストレーションの様子。花束を買うシーンは、9:34あたりから始まる

Vivはオープンであることがコンセプトだから、ほかのアプリとの連動が可能だ。だから、この花束の買い物のように、質問に答えるだけでなく、その先までフォローしてくれる。デモンストレーションではホテルの予約やUberの配車もVivがやってくれ、会場の喝采を浴びていた。これぞ、まさしくパーソナルアシスタントサービスだ。

全世界が注目! ザッカーバーグ氏も出資済み

Vivは、すでに45社以上の企業とパートナーシップを結んでおり、巨大なエコシステムとしての成長が見込まれている。そんなポテンシャルを見込んでか、Facebookのマーク・ザッカーバーグ氏がすでに出資をしているし、Googleが買収をオファーしたなんて噂も飛ぶほど、世界から注目を集めている。リリースは2016年内を予定しており、その実力を試せる日は近い。

ちなみに、Vivの声色はデモンストレーションでは明らかにされていない。男声なのか、女声なのか、たけだけしいのか、艶めかしいのか……。世界中の合成音声好きが妄想を膨らましているに違いないだろう。

上はキトラウスさんが、「Vivのアイコンは、Wi−FiやBluetoothと同じくらい、おなじみのものになるに違いない」と言って、デモンストレーションなどで用いる図だ

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【イノベーターズ】「インターネット時代に編集者はなにをすべきか、を実行する男」佐渡島庸平

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通信やICTにまつわる”なにか”を生み出した『イノベーターズ』。彼らはどのように仕事に向き合い、いかにしてイノベーションにたどり着いたのか。本人へのインタビューを通して、その”なにか”に迫ります。今回は、インターネット時代の作家と編集者の新しい仕組みを生み出した、佐渡島庸平さんのインタビュー。

この春、引っ越したばかりの新たなオフィス。明治通りに面した、自然光のたっぷり入る応接スペースには佐渡島さんが講談社時代に手掛けた作品と、「コルク」が担当する作品がぎっしり詰まった本棚が。『ハルジャン』は『宇宙兄弟』の小山宙哉の初めての連載作品だ

佐渡島さんはもともと講談社の編集者である。

モーニング編集部に10年いて、井上雄彦の『バガボンド』や安野モヨコの『働きマン』を担当し、三田紀房と『ドラゴン桜』をヒットさせ、小山宙哉を見い出して一緒に『宇宙兄弟』を生み出した。そのあと、独立して「コルク」をつくった。作家エージェント会社として、現在、十数人の作家と契約している。

2012年に創業し、今年の10月で丸4年。総勢12〜13人という規模なので、編集者を目指す人にとっては、もしかしたら出版社よりもハードルが低く見えるのかもしれない。

「そういうことでうちに入りたいって来る人もいるんですが、『コルク』が求める編集者がどういう役割なのか、インターン期間を設けて理解してもらっています。」

小説や漫画をインターネット化するということ。

社名の「コルク」は、ワインのコルクから。いいワインを世界に届け、後々まで残すには、きちんとしたコルクで栓をする必要がある。いい作品における、そんなふうな栓になるべくこの名をつけたという。ちなみにロゴのデザインは、good design companyの水野学

出版社の編集者が持つ機能を外に出して独立させたような会社のように見えるかもしれない。通常、編集者と聞くと、作家を担当し作品づくりをサポートして、商品化し宣伝して売る人のことをイメージする。ちなみにここで定義しているのは、「文芸」や「漫画」の編集者。ついでに言うと、面白い企画や世の中で流行しそうなものをキャッチしたり生み出したりして、まとめて雑誌や本にしたり、ライターに書かせたりするような編集の仕事も含まれる。

ともあれ、そういう従来の編集者と、「コルク」が定義する編集者では仕事の範囲がかなり異なる。つまり、そこのところが佐渡島さんのイノベーションなわけだ。

それが、インターネット時代の編集業。「コルク」では”コミュニティ・プロデューサー”と呼ばれている。

単に小説や漫画を電子化するというだけの話ではない。コンテンツがインターネットにつながった時、どうすれば作家や作品の価値が最大化できるかということを考える。

もちろん従来の編集者のように、作家が物語を作ることのサポートもするけれど、それでさえ、そもそも考え方が変わってきている。

「これまでは社会に対して有効なメディアが、おそらく数十個ほどしかなかったんです。そのパイを得ると有名になることは保証されている。だから、多くの作家がメディアの型に自分の作品を当てはめた。それが今ではインターネットがあり、すごくニッチなところに多くのニーズがあることが分かってきた。一方で、有効なメディアも昔ほどの力はない。……となると、メディアに合わせて形を変えるのではなく、作家はとにかくまず自分の描きたいことをしっかり担保すること。自分が何者かを分かっていて、表現したいものを強く打ち出す人が勝つ時代になってきていると思います」

そうして生み出された作品は、雑誌や単行本、電子書籍で発表されるだけでなく、SNSを窓口に拡散される。

「例えば『宇宙兄弟』は、以前は『モーニング』と単行本用にしか編集していませんでしたが、今はTwitter、 Facebook、LINE、メルマガ用に再編集して世に出しています。雑誌でいうと『ジャンプ』も『マガジン』も『サンデー』も『ビッグコミック』も『モーニング』も、全部メディアとしての色合いが違いますよね? それと同じようにSNSもそれぞれ違うので」

拡散と同時にコミュニティを作り、運営していくのも「コルク」における編集者の役割。そして、作家のウェブサイトもつくる。通常は制作会社に外注するが、よほどの専門領域以外は全部、担当者が手を動かすのだ。

「コルク」の採用情報のページでは、こんな職種を募集している。

○ファンのコミュニティをネット上で構成するために、まだこの世に存在しないプログラムを生み出すCTO候補
○作家のサイトを、作家のこだわりに合わせ、日々改善していくフロントエンジニア
○作家の頭に中にある世界を、できるだけそのまま、リアルなものとして生み出し、ファンに届けることを可能にしてくれる、商品開発の経験者
○インターネットを使用して作家のコミュニティを形成し、そのコミュニティでファン同士が活発に交流するためのマネージメントを行うコミュニティマネージャー

すべて、今の時代に、作家が作ったコンテンツを多くの人に伝えるために必要な仕事だと佐渡島さんは考えている。

ちなみに、「今いる20代の人間には、コードはある程度書けるようになっておけと言ってます。プログラムをいじることができて、その種の発注をする際にエンジニアときちんと会話ができるように。時間がないときには、ちょっとした部分なら自分で触れるように」と。

なぜなら、作家のことを一番知っているのは編集者であってしかるべきだから。そして、今、編集者が行うアウトプットは、”紙の本”だけではないから。

“紙の時代”あればこそ、今がある。

さどしまようへい
2002年に講談社に入社し、週刊モーニング編集部に所属。『バガボンド』(井上雄彦)、『ドラゴン桜』(三田紀房)、『働きマン』(安野モヨコ)、『宇宙兄弟』(小山宙哉)、『モダンタイムス』(伊坂幸太郎)、『16歳の教科書』などの編集を担当する。2012年に講談社を退社し、クリエイターのエージェント会社、「コルク」を設立。現在、漫画作品では『オチビサン』『鼻下長紳士回顧録』(安野モヨコ)、『宇宙兄弟』(小山宙哉)、『テンプリズム』(曽田正人)、『インベスターZ』(三田紀房)、『ダムの日』(羽賀翔一)、小説作品では『マチネの終わりに』(平野啓一郎)の編集に携わっている

佐渡島さんは、紙の本の編集が大好きだったという。

「僕は小中学年ぐらいから、本を読むのが当たり前の生活を送ってきました。誰かの作品に触れるのがすごく好きで、そういう深い思考とか世界観を多くの人に届けたいって思ってたんです。で、本というものを生み出していくのにすごくいい仕組みを持っていると思ったいくつかの出版社を受けて、幸いにも講談社に入れました。”編集者を目指す”というより、僕の想定するようなかたちで作家の手伝いができる仕事を考えて、消去法の結果そうなったんです。もし試験で落ちたら、大学にこもろうって思ってたほど」

果たして、毎日は楽しかった。

「実際、モーニング編集部で働き始めたら、”これこそが僕のやりたかったことだ!”って。こういうふうに漫画家と打ち合わせをして、原稿が上がってくることに喜びを覚えて……っていう日常が幸せで(笑)。仕事してるって感覚じゃなかったんですよ」

ヒット作を次々生み出し、結果も出した。『ドラゴン桜』はドラマ化され、一大ムーブメントとなり、『16歳の教科書』などの副読本も制作した。『宇宙兄弟』のムックの編集も担当した。同じ時期に伊坂幸太郎の小説『モダンタイムス』を『モーニング』に連載、その後に『宇宙兄弟』のアニメ化、実写映画化と、コミック誌編集部においては、非常にマルチな仕事を請け負っていた。そんな仕事のひとつ、親世代向けの『40歳の教科書』で、アドラー心理学のオーソリティ・岸見一郎を取材したことが独立の一つのきっかけになった。

「アドラーによると、雑談は大抵3つに分けられるそうです。『あの人が悪い』『私かわいそう』『これからどうするか』。それでほとんどの人が『あの人が悪い』『私かわいそう』をテーマにしゃべってるそうなんですね。あの人がもっとしっかりしていれば、会社さえちゃんとしてれば、日本の景気が良ければ、政府がいい加減だから……。他人が頑張れば自分はもっといけるのにっていう、白馬の王子様を待つパターン。『これからどうするか』を話してる人はほとんどいないそうなんです。それで強く思いました。”僕は自分の人生を『これからどうするか』について話していきたい”って。他人のことを愚痴るカッコ悪い時間を過ごすのは、もうやめよう! っていう思いで」

また、講談社でやれそうな仕事はひと通りやった、という自負もあった。21世紀になるまで、日本の出版社のシステムは非常に良くできていて、うまく機能してきたと佐渡島さんは言う。

「作家にとってベストだったのは、出版社の編集者と仲良くすること。間に人を挟むよりも、作品づくりに関してはうまくいってたんですよね。でも今や、本は多くの人にいろいろな情報やつくり事を伝えるのに最適な手段であり続けるとは限らなくなってきています。作家もネットや広告代理店などいろいろなところと付き合った方が作品の価値は高まるし、作家のビジネスも良くなると。例えば、『宇宙兄弟』をアニメ化・映画化するときに、担当するのはライツという部署なんです。でも、『宇宙兄弟』について、社内で誰よりもよく知ってるのは担当編集の僕です。作家と作品にとっていちばん良いやり方を選択できるのがベストじゃないかと」

すでにある作品の展開の仕方だけでなく、そもそもの作品をつくり出す際にも、そこは重要だと佐渡島さんは考えた。

「作家がストーリーを描き続けられる時間は限られています。作家の年齢に適した描くべき作品と、雑誌が求める作品は、時として一致しません」

その時期、雑誌にどんな作品が必要か? ではなく、作家がその時期になにを描くべきかというスタンスに立つと、アウトプットは全然違うものになってくる。作家の側に立って、人生を見渡しながらプランを立て、場合によっては違う媒体に売り込みをかける。漫画だけでなく、映画化、ゲーム化なども一元化して考えてゆく。

「なにをどう出していくかっていう順番がすごく大切だと思っていて。そういう視点で仕事ができる作家エージェントが必要だと思ったんです」

かくして、作家との理想的な関係を追求しながら、現代のテクノロジーを最大限に活用する新たな時代の編集者は生まれた。

「通信手段が変わって情報のあり方が変わって、今、人間がどんどん自由になってきているはずなんです。でも依然として狭い枠組みの中で考えるクセがついている。それをいかに開放していくか、っていうところが課題ですね」

5G(次世代移動通信システム)の未来を見越して佐渡島さん、世の中がストリーミング中心になり、「所有」の概念が変わると予想している。その想定は、すべてがシェアされ貨幣の意味合いがなくなり、国の枠組みが解体するところまで突き詰めるところまでいく。非常にロジカルにその流れを語ってくれる。でも、仕事上はずっと先の未来は見通さないという。

「だって僕以外のプレイヤーによってどんなふうに変わるか、全然分からないですから(笑)。たぶん人類って、どこまで行っても精神的な豊かさを求め続けるんじゃないかな。このまま人工知能とかが進化して、この国の人たちが働かないで毎日3食ありつけたとしますよね。で、月に何回かはリッチなお店にも行けると。暇だからたぶんテーマパークとか海に行ったりして楽しむんでしょうけど、いずれ飽きる。それで自分の頭の中でつくる遊びが重視されるようになると思うんですね。そうした遊びをつくる人間は、多くの人の精神的な不安定さを解消できる」

その人間こそ、作家だという。その価値を、どんな未来が来ても最大化すべく、佐渡島さんは新たな道を模索し続けている。

「会社を立ち上げて4年ですけど、社会が半年単位でどんどん変化している印象ですね。全然落ち着いていられないですよ。ずっと夏の砂浜の上を走ってる感じ(笑)」

仕事や事業が成功し、その場所の居心地が良くなると、途端に居心地が悪くなるという。そんな場所でぬくぬくと過ごしていたら、それ以上の成長が見込めないから。講談社の最後の頃がそうだったという。今の場所は、幸か不幸か、まだまだ居心地が良くなる感じはしないらしい

関連リンク

コルク
ブックパス ぼくらの仮説が世界をつくる(佐渡島庸平)
ブックパス 宇宙兄弟
佐渡島庸平(@sadycork)Twitter

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【TSミライ部】心を持たないAIは、本当にヒトと通じ合えるのか?

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AIの進化が目覚ましい。チェスや将棋にとどまらず、小説を書いたり音楽をつくったり、できることがどんどん増えている。近い将来には、人工知能が人間の能力を上回るシンギュラリティ(技術的特異点)が訪れるといわれているが、この数年の間にもそのリアリティは高まっているように感じられる。先端技術からITや通信のミライを占うこの連載、今回のテーマは「AIとのコミュニケーション」だ。

いつかAIが人間と変わらない能力を身につけたとき、あるいは、人間以上に賢くなったとき。気になるのは、ヒトとロボットがどんな関係を築いているのかということだ。知的な職業はAIに取って代わられ、ロボット上司の下でヒトが働いているのか。または、面倒な雑務や家事はぜんぶロボットに任せて、ヒトはのんびりと遊んで暮らしているのか。そうやって生活にAIが入り込んだ未来には、ヒトは機械とどんなコミュニケーションを取るのだろうか?

これまでのスマホには、”エモさ”が足りなかった

エモパーとは「エモーショナル・パートナー」の略。シャープのAQUOSシリーズ2016夏モデルにはver.4.0が搭載されている

ヒトとAIのコミュニケーションという点では、未来を待たなくてもすでに実現している分野がある。スマホに搭載されている音声認識型のパーソナルアシスタントだ。シャープが2014年に発表し、同社のスマートフォンに搭載されている「エモパー」もそのひとつ。こちらが話しかけると応答するというものが多いなか、エモパーはスマホが持つセンシング技術とAIを使って、場所やシーンに応じて感情豊かに話しかけてくるという、ちょっと変なアプリだ。

「エモパー4.0のあるスマホライフ 」SHARP AQUOS Mobile(YouTube)

机の上に置いたスマホが、「明日は○○の花火大会があるブ~」「もう寝る時間だブ~」と突然声を出す。最初は戸惑うが、付き合うほどにかわいいヤツに思えてくる。これは、AIとヒトとの新しい関係なのではないか? プロジェクトチームのメンバーに話を聞いた。

エモパーの開発に携わったシャープの3人。中央がプロジェクトリーダーの小林 繁さん、左が中川伸久さん、右が江口恭平さん

「弊社では携帯電話が登場した時代から、ケータイやスマホをつくり続けてきました。今ではスマホを1人1台、肌身離さず持つ時代になりましたが、それでもまだ、ただの道具として使われています。せっかくずっと一緒にいるんですから、もっと家族やパートナーに近い関係をつくりだせるんじゃないかと考えたのが、エモパーの出発点です」(中川伸久さん)

単なる道具としてのスマホではなく、ヒトとの間にパートナーシップを築くこと。そのために開発チームが考えたのが、「答えるだけでなく、話しかけてくるスマホ」。とらえようによっては、家族のようにウザいアプローチである。

「スマホって、持ち主のことを結構何でも知っているんですよね。興味のあるキーワードや位置情報、今日は何歩歩いたかという情報まで蓄積される。でも、すごくたくさんの情報を集めている割には、いまだにユーザーが操作しないと答えてくれないんです。家族だったら向こうから話しかけてくるでしょう? 『疲れてない?』とか『今日は大変そうだね』とか。大した意味はなくても、いいタイミングで声をかけてくれるのが、パートナー。そうやって向こうからアプローチしてくるというのが最初にあったアイデアで、じつはその切り口一点で、センサーやシステムをひいひい言いながらつくったんです」(小林 繁さん)

ヒトと仲良くなれなそうな、キモいアプリができた!

「スマホを振ったときに何かをしゃべるという機能があるんですけど、最初に振ったとき、『そんなに振っても私のスカートはめくれないわよ』って言われたんですよ。あれはめちゃくちゃ気持ち悪かった」(小林 繁さん)

こうして、人類のエモーショナル・パートナーを目指す「エモパー」の開発がスタートした。だが、「最初のエモパーは、本当に気持ち悪かったんですよねぇ」と小林さん。ほかの2人も、深くうなずく。

「今なら朝起きたときに天気の話をするとか、挨拶をするとかいろいろアイデアが出せるんですけど、当時はしゃべらせる内容もタイミングも、何がいいのかよくわかっていなくて。昼過ぎに占いの結果を告げられて、それを今言われても遅いよって思ったり、突然『キング牧師がこう言ってましたよ』みたいなことを話しかけられて困惑したり。話の内容もさることながら、とにかく間が悪くて、何が出てくるかわからない、変なおみくじみたいな存在になってしまいました」(中川さん)

「私はシステムの設計を担当したんですが、一応、その時点でも、時間や位置情報などの状態をもとにして話すように設計されていたんです。ユーザーがいる場所が自宅なのか職場なのかは計測していましたし、スマートセンシングみたいな概念はありました。ユーザーに寄り添うアプリを目指していたんですけれど、実際に声が入ってくると、なぜか気持ち悪かった」(江口恭平さん)

試作段階のエモパーを使った3人が、口を揃えて「気持ち悪い」を連呼する。逆に試してみたい気にもなるが、今あるエモパーはその気持ち悪さを払拭すべく研究され、リリース後にもバージョンアップを繰り返して洗練されたものだ。彼らはどうやってエモパーを気持ち悪くなくしたのか。

「その後の知見を踏まえてお話しすると、エモパーの発言内容がどういう文脈で出てきたのかがわからないと、気持ち悪さを感じるんです。たとえば、脈絡なく『傘を持っていったほうがいいよ』と言われると、気持ち悪い。そこに『今日は雨が降っているから、傘を持っていったほうがいいよ』とひと言挟むだけで、しっくりくる。その前段がすごく大事だったんですよね。いきなり『そろそろ出かける時間じゃないですか?』と言われると唐突だけど、その前に『8時10分です』と前置きするだけで、エモパーがどういう情報をもとに発言したかが伝わるんですよ」(小林さん)

“間”と同様に、アクセントも重要。エモパーでは、性格や話し方が異なる複数のキャラクターからひとつを選択。最初に登録する名前のアクセントも3パターンのなかから選ぶことができる

話が唐突だったり、間が悪い人というのは、確かにいる。それが機械となると不気味さが増すというのも納得。ただ、これはスマホにしゃべらせてみたからこそ気づけたことだ。その後のエモパーがコミュニケーション上手になったのは、AIが相手の心を読めるようになったからではなく、開発担当の江口さんがシステムを簡略化し、ひたすらトライ&エラーを繰り返してしゃべる内容やタイミングを調整したから。

「結局、人間の反応というのは、実際にユーザーとして体験してみないとわからないんですよね。しゃべらせて聞いてみて、気持ち悪いと思ったら入れ替える。その繰り返し。そうするうちに、間の取り方の重要性がだんだんわかってきました。『おはようございます』の後や次の話題に移るときには、少しの間を置かないと頭のなかで話が切り替わらない。ずっと聞いていると疲れてくるし、気持ちを感じられないんです」(中川さん)

「たまに、みんなのなかでもう終わったのに、まだその話を続けるの? って人がいるじゃないですか。おそらく間の取り方が他人と違うからだと思うんですけど、あれってわずか1秒足らずの違いなんです。話したことをちょっと考えてもらうには、150~200ミリ秒の間があればいい。『おはようございますきょうはいいてんきですね』とぶっ続けで言われたら頭に入ってこないし、間が1秒空いたら、その話題は完全に終わります。人間の脳や認知って、知れば知るほど面白いですよ」(小林さん)

普段しゃべっているときに意識していなくても、ヒトはみんな、話す内容に合わせてこれほどデリケートな間を調整しているのだ。逆にいえば、たとえ心を持たないロボットであっても、間や抑揚を表現できれば、コミュニケーションは成立する。話を聞くヒトが、その”間”に、感情や意味を読み取ってくれるからだ。

エモパーの未来はどっちだ?

話を未来に戻そう。エモパーはヒトとコミュニケーションを取るアプリだが、言葉自体を生成するAIではない。いつ、どこで何をしゃべるかはプログラムがAIとして選んでいるけれど、話す言葉を考えたのはヒト。その数は非公表だが、ウン万とおりのシナリオが、選択肢として投入されているそうだ。将来的には、これらの言葉の生成や、間の取り方を自動で行えるようになるだろうか。

「開発時にプログラムを組む段階で自動化したかったんですけど、実際にやってみると感覚的な部分が大きすぎて、とてもできなかったんです。ただ、これまでの開発や検証を経て、それぞれの開発メンバーのなかには、ヒトに親しみを感じさせるしゃべり方のノウハウがたまっているはずなんですよね。プログラマーとして、それをシステムとして取り出してみたいという思いはあります。ただ、ある程度のラインまではヒトに近づけられるとしても、最後の何ミリ秒という差で、違和感は残る気がしますね。それに、完全に自立したAIをつくるというのは、僕らが考えるエモパーの未来とは、ちょっと違うかな?」(江口さん)

エモパーがヒトに近づくべく目指しているのは、あくまでスマホの人格として、ヒトに親しみを感じてもらうための表現の部分。そのためには、ずっと話し続ける必要はないし、人間を代替するようなスペックも必要ない。小林さんは、「スマートフォンに愛着を持ってほしいからって、スマホ中毒の人を増やしたいわけじゃない」という。

実生活を脅かさない範囲でなら、ウソもつく

「たとえば先日、レストランで隣に座ったカップルが向かい合ってスマホを触っていたんです。目の前には大切な人がいて、リアルなコミュニケーションがあるのに、バーチャルなコミュニケーションに没入している。これはやっぱり変なんです。AIに愛着が生まれることで、寂しさを紛らわせたり、役に立ったりするわけです。でも、心の隙間を埋めてくれるのはいいけれど、その埋め方が実生活を脅かすものにはなってほしくない。『こんなイベント行ってみない?』とか『いい天気だから散歩に出かけよう』とか、あくまで実生活を充実させ、豊かにするようなコミュニケーションをつくっていく。これが、我々のプロジェクトで共有されている指針です」

エモパーはこれからさらに洗練され、進化していくだろうが、人類から仕事を奪ったりすることもなければ、代わりにやってくれることもなさそうだ。シンギュラリティが起こるとすれば、目の前にいるヒトとのコミュニケーションにおいてだろう。人類が自分の感情を表現することを怠れば、気の利いたことを言う機械に負けてしまう。そんな時代が、やってくるかもしれない。

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エモパーク
エモパー搭載スマホ AQUOS SERIE SHV34
エモパー搭載スマホ AQUOS U SHV35
エモパー搭載ケータイ AQUOS K SHF33

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“SNS疲れ”はなくせる!? 上手なSNSとの付き合い方を調査してみた

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Facebook、LINE、Twitter……遠方の友人とも簡単に繋がることができて、毎日が便利で楽しくなるSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)。あなたはストレスフリーで使えているだろうか?

「SNS疲れ」という言葉がある。たとえば、楽しくて良かれと思ってポストしたことが、「コメントに返信しなくちゃ……」「既読したらすぐに返さなくちゃ……」「あの人からのフォローを返さなくちゃ……」といったコミュニケーションの”To Do”をつくり、結局、ポストした本人がプレッシャーを感じて「疲れ」てしまうことだ。傾向的には、真面目だったり神経質タイプの人が引き起こしやすいといわれている。

さて、ではこういった「SNS疲れ」を防ぎ、SNSと長く上手に付き合っていくにはどうしたらいいのだろうか。「あなたが感じる”SNS疲れ”と、その対象法は?」という簡単なアンケート調査をもとに、LINE、Facebook、Twitterとの付き合い方を考えてみた。

LINE

今や日常のコミュニケーションのインフラになりつつある「LINE」。スマホとの相性がよく、複数人と、クイックにコミュニケーションが取れるのが最大のメリットだ。また、電話番号で自動的に”友だち”に登録されるので、交友関係も広がりやすい。しかし、知らず知らずのうちに返信する機会が増えていくことにストレスを感じてしまう人もいるようだ。

【「すぐに返信できない人」になる】

「”仕事に集中できなくなる”という理由で上司にメッセージ受信の通知を切ることを勧められ、気付くのが遅れちゃう、と言い訳している」(20代/電機メーカー/女性)

「ちゃんとコミュニケーションが取りたいから、まとまった時間があるときにメッセージを返すことにしている、と親しい友人に伝えた」(30代/広告/女性)

【友だちの自動追加をオフる】

「電話番号から自動的に友だち登録されないように、設定で”友だちへの追加を許可”をオフにしている。”なんとなく”の付き合いが減って楽になった」(40代/広告/男性)

Facebook

Facebookはもう公の性格が強く、仕事のためにそれなりに力を入れてチェックしているという人も多い。疲れを感じる部分として挙がった回答を見てみると、「ページを開いたらなんとなく読まなきゃって思ってしまう」人や、「人の日常を見せられるのが辛い」といった意見が上がっていた。

一方でLINEに見られるような「既読スルー」へのプレッシャーは思ったより少なく、「とりあえず『いいね』を押しておけば、わざわざコメントをする必要もないし」との声もあった。

【友だちだけど、フォローはオフ】

「そもそも自分のタイムラインに、興味のない人の投稿を表示させない。投稿者の名前の右にある『∨』のマークから、『○○(名前)のフォローをやめる』を選択すれば、友達としてつながったままで、投稿を非表示にできる」(30代/プログラマー/男性)

目に入らなければ気にならないし、もし自分の話題が出ていたりして、あとから”読んでないの?”と言われても”気付かなかった”で済む。少しドライに感じるかもしれないが、仕事上の付き合いで友達登録する人も多いFacebookだけに、思い切って”タイムラインの断捨離”をしてみるのも手だろう。

Twitter

今回のアンケートでは、Twitterで疲れを感じている人は、少数派だった。理由としては、やはり基本的には匿名での参加というのが大きいだろう。

【匿名性を生かして気ままにお付き合い】

「匿名でやっていて、一部の友だちにしか言ってない」(30代/マスコミ/女性)

「友人・知人とのコミュニケーションはLINEやFacebookがメインになった。Twitterは情報収集とネタ投稿という感じで、気ままに使っている」(40代/電機メーカー/男性)

SNSには面倒な面もあるものの、うまく付き合えば、人付き合いや、趣味、生活の充実をはかる手助けになる。今年の春から新生活が始まった人も、そうでない人も「SNS疲れ」にならないよう、自分に合った使い方を続けていこう。

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